あきりんの映画生活

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「八日目の蝉」 (2011年)

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2011年 日本
監督:成島出
出演:井上真央、 永作博実、 小池栄子

ヒューマン・ドラマ。 ★★★★

育ての親か、生みの親か。
母子の愛情とは何なのか。母性はどうやって生じる?を問うヒューマン・ドラマ。

不倫相手とのあいだに妊娠したものの、中絶手術をしてしまった野々宮希和子(永作博実)。
一方で、男の妻は可愛い赤ん坊を産んでいた。
希和子はその赤ん坊を衝動的に連れ去ってしまう。
そして赤ん坊を薫と名づけ、希和子は逃亡生活の中でわが子のように愛しみながら育てていく。

映画は、その喜和子と薫の逃亡生活と、20年後の成長した薫(井上真央)の有り様を交互に映していく。
生後7ヶ月で誘拐された薫は、4歳の時に本当の両親のところへ連れ戻されたのだ。
しかし、薫は実の母親にはもう馴染めなくなっていた。
まだ状況を理解できる歳じゃない薫は、交番へ行っては知らないおじさんとおばさんに捕まってる。と言い続けるのだ。実の両親はその度に傷つく。

そりゃ、自分を愛してくれていて、母親だと信じて慕ってきたのが、実は誘拐犯だったとしたら、幼子の心は千々に乱れるだろう。
かたや、4年経って戻ってきたわが子にどういう風に接すればよいのか、そりゃ実の母親だって戸惑う。
誰にも一律的な答えなど出せない深い問題である。

一番悪いのは不倫をして、できた子どもを中絶させた父親。こいつが一番悪い。
わが子を誘拐させてしまった元凶も、父親だ。

誘拐してしまいながら、その子を愛しみ続ける永作博実がよかった。
それに、成長した薫の前に現れるルポライター役の小池栄子もよかった。
少し前屈みでの動作が、尋常ではない脆さを抱えた心をよくあらわしていた。

彷徨った果てにたどりついた小豆島での喜和子と薫の生活が美しかった。
それだけに別れの場面、その前に二人で撮った写真のエピソードは印象的だった。

そしえ、希和子が薫と引き離されるときの台詞、その子はまだご飯を食べていません、にはやられた。
母親としての愛が言わせた言葉だと思えた。

タイトルの”八日目の蝉”というのは、他の蝉が七日目に死んでしまったあとに生き残ったら、みんないなくなって寂しいと思うのか、それとも他の者は見ることのできなかった八日目を見る悦びがあるのか、という問いかけだった。

難しい問題の問いかけをしている作品だった。
それでいて情感に溢れていた。

あとで調べてみたら、日本アカデミー賞で作品賞など10冠を獲っていた。
それに永作博美ブルーリボン賞キネマ旬報で主演女優賞を獲っていた。
やはり評判作だったのだな。