2010年 スペイン 95分
監督:ダビ・ビニヨス
出演:ウナクス・ウガルデ、 ノラ・チルナー
若者の苦い恋物語。 ★★★
路面電車が走るきれいな街並の風景から映画は始まる。
舞台はスイスのチューリッヒ。こんなにきれいな街なんだ、一度訪れてみたいもの。
そこの有名レストランで働くことになった料理人のダニエル(ウナクス・ウガルデ)が主人公。
ダニエルはスペイン人なのだが、そのレストランにはドイツ人ソムリエのハンナや、イタリア人シェフのヒューゴがいた。
(ヨーロッパって、こんな風に多国籍の人が当たり前に一緒に働いているのだなあ、と、映画には関係のないことに感心したりもした。苦笑)
故郷に婚約者を残してきたダニエルだったが、彼はハンナにすぐに惹かれてしまう。おいおい。
そのハンナは初めてあった夜にいきなりキスをしてくる。おいおい。
外見は頼りなさそうで人の良さそうなダニエルなのだが、シェフとしての腕前は確かだったよう。
先輩シェフのヒューゴとの息も合ったし、スイス国内でも有名人であるオーナー・シェフにもすぐに認められる。
そしてそして、ハンナはなんとそのオーナー・シェフ不倫関係にあったのだ。
こういうレストランを舞台にした映画は好みである。
表からは見えない厨房の、プロフェッショナル同士の戦場のようなやりとりや、見た目も美しい料理が創られていく様など、見ているととても楽しい。
ダニエルの気持ちを知りながらも、オーナーとの関係を止めないハンナ。
そのくせダニエルに思わせぶりな行動もするハンナ。
このあたりが見ている者としてははっきりしない女心にイライラ感が募ってくる。
お前、いくら自分の気持ちに忠実だといっても、自分勝手すぎやしないか?
そしてそして、なんとハンナは妊娠もしていたのだ。おいおい。
この映画、どうなるのだ?
これじゃ、オーナーと別れてダニエルとむすばれるという定番の物語結末ではおさまらないぞ(苦笑)。
中盤でダニエルとハンナ、ヒューゴの3人がドライブに出かける。
それも国境を越えてフランスをこえて、ダニエルの故郷であるスペインまでのドライブ。
ヨーロッパにはある協定があって、加盟国間ではパスポートチェックもセキュリティチェックもなしに行き来ができるのだそう。
ヨーロッパって、そうなんだ・・・。
このヒューゴが主人公を差し置いて超イケメン。性格も好い奴。
ダニエルやハンナのことを心底から心配してくれたりする。本当に好い奴。
でも彼を主人公にしたらきっとつまらない映画になってしまうだろう。
物語なんてそんなものだ。
美しい風景と、美味しそうな料理の様子も楽しめた映画だったが、さて、ダニエルとハンナはどうなったのか。
(以下、結末のネタバレ)
エンディングは良かった。
ハンナの書いた物語が絵本になっている。作者紹介のページには、彼女と可愛く育っている女の子の写真が載っている。
その絵本を、ダニエルは自分の小さなレストランの建つ故郷の浜辺で眺めているのだ。
一般の評価はとても低い映画です(苦笑)。本邦未公開の映画です。
でも、大人の恋心の微妙さを描いていて、私は観て満足でした。