監督:ファティ・アキン
出演:トリスタン・ゲーベル、 アナンド・バトビイレグ
青春ロード・ムービー ★★★
学校では皆から変人扱いされてクラスのマドンナの誕生会にも誘われないマイク(トリスタン・ゲーベル)。
夏休みになると、アルコール中毒の母親は断酒施設へ行ってしまうし、父親は若い愛人と長期旅行に行ってしまう。
そんな彼を、転校してきたばかりのチック(アナンド・バトビレグ)が盗難車に乗ってどこかへ行こうぜと誘ってくる。
監督は、「愛より強く」で微妙な愛を描いていたファティ・アキン。
今度はクラスからはみ出し者の二人の少年の行き当たりばったりのロードムービー。
ユーモアを交えながらも、どこかしみじみとした余韻も残す映画だった。
転校生のチックはアジア系ロシア人。
外見はどう見たって危なさそうな奴。善良で引っ込み思案のマイクなんか近づこうとも思わないような雰囲気を持った奴。
そんな彼との二人旅は、意外に気安いものとなっていく。好い奴だったんだ(チックは自分のある秘密を最後の方で明かす)。
ワラキアに行こうぜ! それ、どこだ?
とにかく南に行けばいいんだ どっちが南だ? とりあえず右へ行ってみるか
スマホで道を確かめよう 馬鹿かお前は 位置特定されちゃうだろ そんなもん捨てちゃえ
といった案配。少年の無軌道旅。若さだなあ。
盗んだ車にあったカセットテープをかけてみると、流れてくるのはリチャード・クレイダーマンだあ。
なんかミスマッチのようなこの曲が何回も車内に流れる。
と、次第にこの曲が流れているのも好いなあ、なんとなく合っているなあ、と思えてくる(笑)。
途中の廃屋で知り合うイザという、やはり14歳の少女。
家出してきたのか、どこかから逃げ出してきたのか、訳あり風な少女。
彼女も交えての3人旅となるのだが、少年に比べると同い年でも少女の方が早く大人に近づくのか。
3人が眼下に広がる風景を見下ろしながら、50年後の今日、ここで3人でまた会おう、と約束する。
この場面が好かったなあ。
(だからこそ、安易に邦題に持ってこないで欲しかったぞ、この邦題は酷いのひと言!)
少女はあっさりと別れていき、二人の旅もあっけなく終わる。
しかし、マイクの人生はこのひと夏の経験を境に大きく変わっていくのだろう。
50年後にあの3人は再会するのだろうか?
王道ととでも言うべき内容の映画ですが、とても清々しい気持ちになれます。