あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「暗戦 デッドエンド」 (1999年)

イメージ 1

1999年 香港 90分
監督::ジョニー・トー
出演:アンディ・ラウ、 ラウ・チンワン

サスペンス。 ★★★☆

タイトルからしジョニー・トー監督のことだから、ガンガンにやってくれるかと思いきや、いつものような派手な銃撃戦はない。
泥棒を主人公にしたサスペンスものではあるのだが、どちらかといえば、人情ドラマっぽい。
いや、これもなかなかに悪くない。

物語は、末期ガンで余命1ヶ月と宣告された男(アンディ・ラウ)と敏腕刑事(ラウ・チンワン)の72時間の男のゲーム。
どこまでもクールなアンディ・ラウが格好いい。
そしてラウ・チンワンの方は、実に人間くさくてこちらも好い。

男は真っ昼間に大手金融会社に押し入り、人質をとって高層ビルの屋上へ立てこもる。
狙撃班の銃口から巧みに身を隠して、人質解放の交渉人としてホー刑事を指名する。
そしてホー刑事に向かって、男は「これは、ゲームだ。72時間以内にオレを逮捕してみろ」と言って逃走してしまう。

男の背景などは何も説明されない。
映画はホー刑事の視点で進んでいく。
彼は意外に切れ者なのだが、その上司がたよりなくて捜査の足をひっぱってばかりいるところもユーモアたっぷりで好かった。

犯人と刑事がいつしか相手を認め合う、というのはときおりみる設定だが、この映画の男の友情はひと味違ってしみじみとしていた。
なにより男が末期ガンであり、残された時間が少ないという設定が切ないものをプラスしている。

そして切ないものといえば、バスの中の男と女(ヨーヨー・モン)の出会い。
逃走中の男が乗ったバスが検問に遭おうとする。男は女の横に席を移し、静かにアベックの振りをさせる。
自分がかけていたサングラスを女にかけ、彼女が聴いていたイアホンを片方だけ自分の耳にかける。
なんともクールなのだが甘いのだ。

男と女はもういちどバスの中で会う。
また検問・・・。女は今度は自分から隣の席の荷物をどかして男を隣に座らせる。
しかし、二人の仲がそれ以上に進むことはない。儚い出会いなのだ。
う~ん、好いねえ。

おおきな筋としては、男はある復讐のために大きなダイアモンドのペンダントを奪おうとしていたのだ。
しかし、この映画で味わうのは、そんなサスペンス部分ではなく、敵対する立場の男と男の友情、そしてどこまでもプラトニックな男と女のつかの間の恋だった。

最後近く、BMWのオープンカーで疾走する男とホー刑事。
喀血した男は時限爆弾を取りだす。
二人のやりとりがまた好いんだよなあ。

(ツッコミ)
この映画を観た誰もが、あれは止めておけばよかったのに、と思うであろう場面がある。
ボーリング場の場面である。
観た人なら何も言わずに、ああ、とわかるだろうし、これから観る人はボーリング場の場面だけは何も言わずに我慢してください(笑)。

(以下、ネタバレ)

最後に、男が姿を消したあとの後日談が映し出される。
ホー刑事がバスに乗ると、例の大きなダイアのペンダントをした女を見かける。
すぐにあのペンダントだと気づいた彼が、見事なダイアだね、と話しかけると、彼女は、イミテーションだと言ってある人がくれたの、と答える。

90分にコンパクトに収められていて、それも悪くなかった。
小品という感じですが、トー監督のウェットな部分を見せてくれた作品でした。