1990年 イギリス 92分
監督:アレハンドロ・ホドロフスキー
出演:オマー・シャリフ、 ピーター・オトゥール
ホドルフスキーのアンダーグラウンド世界。 ★★★
さてホドロフスキー監督のもう1本は、「サンタ・サングレ」翌年の「虹泥棒」。
しかし、う~む、これがホドロフスキーの映画か・・・。
この1年の間に監督の中で何が変わってしまったのだ?
出だしはやはりホドロフスキー節が全開。
独り暮らしで変わり者の大富豪(クリストファー・リー)は、財産を狙っている親族など尻目にレインボー・ガールと言われる娼婦たちを館に集めてどんちゃん騒ぎをしている。
そしてお楽しみの最中に心臓麻痺を起こして意識不明に・・・。
彼が死ねばその全財産を受けつぎそうなのは、これも変わり者の甥のメレアーグラ(ピーター・オトゥール)。
他の親族達の邪悪な考えから身の危険を感じたメレアーグラは街を彷徨う。
そんなメレアーグラを匿うのは、街の下水道を根城にしている風来坊のディマ(オマー・シャリフ)だった。
ここから先は割と単調に物語は続いていく。
(といっても、他の監督に比べれば充分に奇想天外なのだが。)
お調子者のデュマは街の大道芸人たちといざこざを起こしたり、わいわいと騒いだり。
市場では食べ物をくすね、手回しオルゴールの機械を盗み。
一方の鼻眼鏡のメレアーグラは、びしょびしょと水が流れる下水道の一角にベッドを備え、何年間もぐ~たらとしている。
こちらは世間を超越している。
そしてなんと言ってもこの映画では、オマー・シャリフにピーター・オトゥールである。
この二人とくれば、これはあの「アラビアのロレンス」のコンビではないか。
すごい顔合わせだな。
このあとも、ホドロフスキーにしては一本調子で物語は展開されていく。
そこまでぶっ飛んでもなく、とてもわかりやすい。
それだけにホドロフスキーに期待するものが大いに足りない。
デュマは我々「人間」を表し、メレアーグラは「神」的存在を表しているのだ、という解釈もあるようだ。
最後近くでは豪雨が街を襲い、あらゆるものが押し流されていく。
地下の下水道には水が流れこみ、メレアーグラも彼を助けようとするデュマも水に飲まれていく。
(以下、ネタバレ)
豪雨が去ったあとの街にふたたび陽が射しはじめる。
ここは美しい場面だった。
メレアーグラを失ったデュマだったが、大きな虹は街の上に架かっていたのだ。
ということで、エロもグロもバイオレンスもありません。
少し変わった人情ドラマなのです。ホドロフスキーの人情ドラマなのです。
驚きでしょ。