2016年 スペイン 92分
監督:ラウール・アレバロ
出演:アントニオ・デ・ラ・トレ
復讐サスペンス。 ★★☆
映画はいきなり宝石店の強盗事件の逃走場面から始まる。
3人が店を襲い、クーロは逃走用の車の運転手として待機していたのだが、事故を起こして一人だけ捕まってしまう。
で、物語はその8年後にとぶ。
いくらかでも派手さがある場面は、あの冒頭の車の場面だけ。
あとはひたすら静かな映像が続く。
あの事件で、最愛の恋人を殺された寡黙な男がホセ(アントニオ・デ・ラ・トレ)なのだが、主人公の復讐心は叫ぶことではなく、心の奥底に深く沈殿しているもののようだ。
彼は行きつけのバーのオーナーのファンホとも親しく、ファンホの幼い娘の聖体拝受式にも出席したりする。
そして家族で切り盛りしているそのバーで働くアナと親しくもなっていく。
実はアナは、もうじき出所してくるクーロの妻だったのだ。
逃げおおせている銀行強盗3人の正体をつかんで、復讐しなくては・・・。
そのためには出所してくるクーロの口を割らさなければ・・・。
アナを利用してでもクーロを問い詰めるぞ。
復讐ものというと、主人公に感情移入して観る側も昂揚していくことが多い。
しかしこの映画ではそのようなことはない。
あまりにもホセは自分の内に感情を秘めてしまっているので、観ている者もその感情を分かち合うような気分にはならない。
ただ淡々と物語を見つめているという感じ。
強盗の一味ではあったのだが、ホセの恋人の殺害の場にはいなかったクーロの立ち位置は微妙。
ホセとクーロは一緒に旅をして復讐を果たしていく。
クーロはホセに同行することで贖罪しようとした?
強盗のボスはちょっと意外な人物であったりもする。
最後、そのボスのところに赴くホセ。
画面は変わり、銃声が一発聞こえる。その銃声で眠りから覚めるボスの幼子・・・。
タイトル通り、徹頭徹尾”静かな男”の復讐ものでした。
スペインのアカデミー賞といわれているゴヤ賞で最優秀作品賞を受賞しています。