あきりんの映画生活

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「立ち去った女」 (2016年)

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2016年 フィリピン 228分
監督:ラブ・ディアス

冤罪の女の復讐劇。 ★★★★

全編モノクロで撮られた4時間近いフィリピン映画
30年間も無実の罪で服役していた女ホラシアの復讐劇なのだが、昂ぶったところは一つもなく、淡々と描かれている。

元小学校教師だったホラシアは、身に覚えのない殺人の罪で服役していた。
30年も経ってから、真犯人が自白して自殺した。
その犯人は、ホラシアの元恋人ロドリゴの差し金で彼女に罪を着せたと告白していたのだ。
出獄したホラシアだったが、夫は既に他界、息子も行方不明になっていた。
おのれ、私をこんな目にあわせたロドリゴを絶対に許さないわよ。絶対に復讐してやるわよ。

今は街の一大有力者になっているロドリゴの情報を得るために、ホラシアは夜の街に出没する。
深く野球帽をかぶった彼女がそこで出会うのはオカマの娼婦、バロット売りの男、物乞いの女、などなど。
みんな社会の底辺で細々と活きている人たち。
ホラシアは、彼らにときに経済的な援助もしながらロドリゴの周辺を探り、復讐の機会をうかがう。

このバロットというのはなんだろうと思って調べたところ、孵化直前のアヒルのタマゴをゆでたものだった。
フィリピンでは夜の街中や住宅街に流しのバロット売りがいるのは普通のことらしい。
バロットの写真も見てみたが、卵の殻を割ると中にヒナになりかけたアヒルが見える。
これ、本当に食べるの?

それはさておき。
乏しい光と、圧倒的な影で映し出される夜の画面が美しい。詩的である。
カメラはほとんどの場面で固定されていて、引いた位置から情景を捉えている。
傍観者のような視点で物語は捉えられていく。

こう書くと、ちょっと退屈してしまうのでは、と思うところだが、まったくそんなことはなかった。
延々と続く物語なのだが、なにか魅せるものを画面が持っているのである。

復讐劇は意外な展開を見せてあっさりと終わっていく。
つまり、この映画は始めから復讐劇を見せようというところには目的を置いていなかったのだと思える。
夜のフィリピンの田舎町の、湿った空気感を伝えたかったのだろうか。

その一方で、復讐しようとする心とは何か、それは復讐が為された後に残るものは何かという問題に繋がっていくのだが、を描いてもいる。
人はどこから”立ち去る”のか、そして、どこへ”立ち去る”のか。
そんなことを観ている人に考えさせる映画でもあった。

ベネチア国際映画祭で金獅子賞を取っています。