2003年 アメリカ
監督:ジョン・ウー
出演:ベン・アフレック、 ユア・サーマン
新発明をめぐる近未来サスペンスもの。 ★★★☆
フリーのコンピュータ・エンジニアのマイケル・ジェニングス(ベン・アフレック)は企業の製品開発に携わり多額の成功報酬を受けている。
ただし、その期間の記憶は消去されるという条件付き。
そして今回、3年間を費やした一大プロジェクトが終了し、記憶が戻ったときにマイケルが受け取ったのは紙袋に入った小物のアイテムだけだった。
あれ、これはなんだ?
フィリップ・K・ディックの原作だが、彼の小説ではしばしば記憶の問題が取り上げられる。
この映画でも記憶が消されることが大きな設定となっている。
本来は、記憶が消された場合、覚えていないその間の人生の意味はなになのか、というようなことが大きなテーマとなり、原作では哲学的とまで言える難解さを伴ったりしている。
しかし、監督はあのジョン・ウー。
彼はそんなことには全くこだわらない。
記憶の哲学的な部分なんて、あくまでも物語の味付け。
俺の映画の主眼はアクション・サスペンスだぜい。
だから、フィリップ・K・ディックものにしては非常に分かりやすい。
ストーリーは、記憶を失う前のマイケルがどんな助けを未来の自分にしておいたか、というところが興味をつないで飽きさせない。
なんの役にも立たないように思われていた紙袋の中の小物が、マイケルがピンチになるたびに重要な働きをする。
しかし、考えてみれば、未来の自分がはじめのピンチに陥ったときのために、過去の自分が小物をまず用意したわけだが、その小物を使って切り抜けたあとに遭遇する2番目以後のピンチをどうやって予見できたのだろう?
しかし、そんな細かいことにこだわるジョン・ウーではないぞ。
観る人もそんな細かいことにこだわってはいけないのだ(笑)。
なるほど、あの小物はこう使うのだったか、と感心しながら観ていればよいのだ。
ジョン・ウーのことだから、ちゃんと白い鳩も飛ぶ。
おいおい、なにもこんなところで鳩が飛ばなくたって、と思わず笑ってしまったが。
失った記憶マイケルを助けて走り回る生物学者にユア・サーマンが扮している。
「アベンジャー」でのお洒落なイメージが強かったユア・サーマンが、回し蹴りみたいなアクションをこんなにもするのかと思ってみたのだが、考えてみれば彼女は「キル・ビル」に出ていたのだった。
この映画の設定とは逆に、偽の記憶を植え付けられるというのが、同じフィリップ・K・ディック原作の「トータル・リコール」だった。
見比べると、監督の違いもあって面白い。