2007年 135分 日本
監督:麻生学
出演:長塚京三、 仲村トオル、 谷原章介、 伊藤悠子
サスペンスもの。 ★★★
9の章立て(10だった?)で、章が変わると主人公も変わっていくという描き方。
連作短編集のようで、それらが次第に結びついていく。
だから各章であらわれた登場人物の顔と名前を覚えておかないと、あとで混乱することになる。
あれ、この人はどこであらわれていた人だっけ?
そしてこの映画の特異な点は、各章の語り手がその章の主人公の財布であるということ。
原作は宮部みゆきの同名小説(未読)。
さすがに物語構成は上手い。興味を抱かせて物語に引き込んでいく。
東京郊外の深夜。男が車にはねられて死亡するのだが、彼は激しく殴打もされていた。
これは殺人事件じゃないか。
第一話の主人公は心臓に病気を抱えた刑事(長塚京三)で、彼の財布が語っている。
殺された男には若く美しい後妻(伊藤悠子)がいて、しかも彼女を受取人にした2億円以上の保険がかけられていた。
彼女には若い実業家の愛人(谷原章介)もいた。
彼のものらしい白い車は現場近くで目撃されている。
これは決まりっしょ。マスコミはいっせいに騒ぎ立てる。2億円は何に使うのですか、一言お願いします。
これに続く章では、この事件とは無関係にみえる人物たちが登場してくる。
名刺を届けて欲しいと頼まれた小学生の男の子。でもその名刺を入れた財布を悪中学生に盗られてしまう。
その名刺の裏にはあの殺人事件の容疑者たちの連絡が書かれていたのだ。
という具合に、それまで無関係に暮らしていた人たちが関係を持っていく。
名刺を利用して恐喝しようとした悪中学生の母親は殺されてしまうし・・・。
この映画は、視聴者に受けること優先で事件を追っていくマスコミを揶揄したりもしている。
テレビ番組は事件の容疑者二人をとにかく追いかけ回す。
そしてその二人(谷原章介と伊藤裕子、ね)が悪びれずもせずに取材に応じ、軽佻浮薄ぶりをこれでもかと見せつる。
どこまでも胡散臭いのだが、彼らには完璧なアリバイが見つかったりもするのだ。
俳優陣はなかなかに好い。
容疑者二人を引き立たせるように刑事役の長塚京三は渋いし、私立探偵役の仲村トオルも格好いい。
印象的だったのは万引きを疑われた家庭生活が不幸な女子高生の逸話。
生徒思いの教師が必死に抗議して万引容疑を晴らしてくれたのだが、転校していくその日に彼女が落としたのは・・・。
(以下、ネタバレ)
真の犯人は意外な人物だったわけだが、いささか無理矢理感があった。
動機付けも映画で語られたものだけでは弱かった。原作ではどうだったのだろうか。
おそらく原作小説はもっと面白いのではないだろうかと思ってしまったのは、鑑賞した映画に対して失礼か。
小説は小説、映画は映画。まったく両者は別物。
そう思ってはいるのだが、原作のある映画の鑑賞では往々にしてジレンマとなるな。