2002年 日本
監督:小泉堯史
出演:寺尾聡、 樋口可南子
北村谷栄、 小西真奈美
都会で傷ついた心が自然の中で癒されていく。 ★★★
大学病院の医師だった妻(樋口可南子)がパニック障害となり、夫(寺尾聡)の故郷である信州へ戻ってくる。そこで村人たちとのゆったりとした生活が始まる。
四季の信濃の風景がとにかく美しい。
難病の少女が助かるという挿入話はあるが、それ以外には何にもストーリーがないような、善意の人だけが出てくる映画。
映画の中の生活ではゆっくりとした時間が流れていて、観ているこちらの気持ちも安らいでいく。それを感じる映画。
小泉堯史監督は「雨あがる」でもそうだったが、寺尾聡の雰囲気を上手に生かしている。
こんな風に優しい気持ちで他人に接することができたらいいなあ、という、誰もが心の奥では望んでいるような人物像を嫌みなく演じている。
阿弥陀堂で暮らしているおうめ婆さんを演じた北村谷栄が素晴らしい存在感であった。91歳になるとのこと。
おうめ婆さんの言葉に「この歳まで生きてきて、切ない話はうんと聞いたから、ええ話聞いてええ気持ちになりたいでありますよ」というのがあったが、これがこの映画の意味を語っている。
外国映画で言えば、「プロヴァンスの贈りもの」「トスカーナの休日」、あるいは「シッピング・ニュース」などの系譜かと思うのだが、あちらの作品はどれも恋が絡んでくるんだよなあ。