1999年 アメリカ 95分
監督:ウッディ・アレン
出演:ショーン・ベン、 サマンサ・モートン、 ユマ・サーマン
天才ジャズ・ギタリストの恋遍歴。 ★★★
大酒飲みで女にだらしがないエメット・レイ(ショーン・ベン)だが、ギターの腕だけは誰もが認める天才肌のもの。自分でも、ジャンゴ・ラインハルトに次いで世界で二番目の天才だと豪語している。
というわけで、映画ではジャンゴばりのジプシー・ジャズがふんだんに流れて、ファンには嬉しい。
エメットは口がきけないハッティ(サマンサ・モートン)と知り合い一緒に暮らすのだが、彼女に対する利己的で、幼児っぽい振る舞いは苦笑もの。
ちょっとチャップリンに似せたメークとあいまって、ショ-ン・ベンが見事に演じている。
そんなエメットを無垢な気持ちで慕い、彼につくすハッティは、たしかにフェデリコ・フェリーニの「ジェルソミーナ」そのものであった。
「道」へのオマージュがあるのだろうか。
ところどころでウッディ・アレンや、ジャズ評論家のナット・ヘンホフがでてきて、インタビューのような形式でエメット・レイの人となりについて語る。
そのように映画は実在の人物の伝記を装っているのだが、実は主人公の「エメット・レイ」は架空の人物だとのこと。
これには驚いた。
彼女を誘ってドブネズミを拳銃で撃ちに行ったり、夜の貨物列車を見に行ったり、奇矯な行動がいかにも真実みがあるようにみえるところがすごい。
あらためてウッディ・アレンの才能を見直してしまった。
最後のギターを叩き割る場面は息をのむ。
どうしようもない救いのない結末なのだが、ウッディ・アレンの映画は、それでもなにかしら暖かいものを作品全体から感じさせるところがある。
どこまでも駄目男なのだが、なぜか憎みきれない、そんな男を描いたちょっとひねった、ほろ苦い人間ドラマです。