あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「逃げ去る恋」 (1978年)

イメージ 1

1978年 フランス 96分
監督:フランソワ・トリュフォー
出演:ジャン・ピエール・レオ、 マリー・フランス・ピジュ
    クロード・ジャド、 ドロテー

アントワーヌ・ドワネルものの最終第5話。 ★★★★

印刷所に勤めながら自伝小説を出版したアントワーヌ(ジャン・ピエール・レオ)は、レコード店で働くサビーヌ(ドローテ)とつき合いながら、妻クリスティーヌ(クロード・ジャド)とは協議離婚をする。
そんなとき、駅で初恋の相手コレット(マリー・フランス・ピジェ)を見かけたアントワーヌは、思わず列車に飛び乗って彼女と語り合う。

と、こんな風にあらすじを書いてもあまりこの映画の雰囲気、魅力を伝えはしない。
20年間にわたるこれまでのドワネルものの総集編的な作品で、現在の情景のあいだに、これまでの作品の断片がはさみこまれる。
かってのコレットとのひとときや、妻クリスティーヌとのこれまでの日々の映像は、ずっとシリーズを観てきた者には積み重なった年月を感じさせて(20年前のアントワーヌやコレットのなんと初々しいことか!)感傷的にすらさせる。

このアントワーヌ・ドワネルものはトリュフォーの自伝的作品といわれているが、その魅力はやはり主人公の人物造形だろう。
アントワーヌは次々に女性に気持ちが移りやすいのだが、そのたびにとても真剣なのだ。
そして生きることに関してどこかだらしなく、次々に仕事を変えたりする。それなのに自分の感情には素直な行動をとる。

久しぶりに再会したコレットととも、気持ちが行き違ってしまうといたたまれなくなって、列車を急停車させて彼女の前から去るという行動をとる。
痛々しいほどに傷つきやすい繊細さがある。

こうしてみると、やはりアントワーヌにとっては初恋の相手のコレットが縦糸であって、そこに横糸となる妻クリスティーヌをはじめとする他の女性や、仕事や、事件が絡み合っているのだと思える。
だから、コレットとの別れが彼の気持ちの中で完結して、それからはじめてサビーヌとの新しい関係に踏み出すことができるようになったのだろう。

20年間にわたって同じ出演者で撮りつづけてきた連作なので、出演者は登場人物たちと同じだけの歳月を経ている。
ジャン・ピエール・レオは、まるで日本のTVドラマ「北の国から」のジュン君のようである。

この映画の魅力は、やはりシリーズの初めから順番に観ることで完璧となる。
おわりに流れる主題歌がまた良くて、涙もの。