2004年 日本、111分
監督:鈴木清順
出演:チャン・ツィイー、 オダギリ・ジョー
平幹二郎、 薬師丸ひろ子、 由紀さおり
清順の最新作。 ★☆
美しい狸姫と、美貌故に父親から抹殺されそうになった若様の恋物語。
歌あり、踊りありのオペレッタだが、そこは鈴木清順、時代劇なのに、ラップもあれば、サンバもある。なんとデジタルで描かれた美空ひばりまでが登場してくるという、通常では考えられないような滅茶苦茶な映画。
はじめに断っておくが、私は「ツィゴイネルワイゼン」を観て以来の鈴木清順の大ファンである。
「ツィゴイネルワイゼン」の私の評価は5つ星であるし、それにつづく大正ロマン三部作の「陽炎座」「夢二」も良かった。
2001年の「ピストルオペラ」も、江角マキコの”チューチュータコカイナ”には全く打ちのめされた。
そんな私だが、この「狸御殿」は駄目だった。
なにが駄目だったのだろうと、自分でも訝しく思う。
書き割りの舞台は清順ではおなじみだし、わざとらしい場面のつなぎ方や、平幹二郎をはじめとする出演者のメーキャップの奇抜さも期待通り。それなのに・・・。
ミュージカルに魅力を感じない性格ゆえ、歌と踊りが合わなかっただけか。
中国語を喋る狸姫という妙な設定のチャン・ツィイーは可愛い。最近はすっかりアクション女優だったが、この映画の彼女は、あの「初恋のきた道」の彼女を彷彿とさせる可愛らしさだった。
脇役の平幹二郎と由紀さおりが、ともに怪優ぶりですばらしい。重要な役どころの薬師丸ひろ子の歌も、アイドル時代の歌声を思い出させるものだった。
かっての「初春狸御殿」を自分流にリメイクしてみたいとの清順の思惑があったらしいが、それがあまりにも予定調和的で、ストーリーが単調すぎたのか、それが私には清順の魅力に結びつかなかったのか。
どうも奇抜さが上すべりのように思えてしまった。支えるべきストーリーとかみ合っていなかったのだろう。
しかし、清順のファンで、この映画もやはり良いなあと思った人も多いのだろう。
鈴木清順のことを知らないでこの映画を観たら、普通の人は怒りだすと思います。
そんな映画です。