2010年 フランス 103分
監督:フランソワ・オゾン
出演:カトリーヌ・ドヌーブ、 ジェラール・ドバルデュー
コメディタッチの人生ドラマ。 ★★☆
まだ女性の社会進出が珍しかった1970年代のフランスが舞台。
スザンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、雨傘工場を経営するロベールを夫に持つ有閑マダム。
ジョギングをし、詩を作るという優雅な毎日で、亭主関白な夫には、妻は飾り物でよいのだと思われている。
何か物足りないわ。私の価値ってこんなもの?
邦題は「シェルブールの雨傘」にあやかって付けられているのだろう。
原題は「飾り壺」。スザンヌの状態を、ただ美しく皆に見せているだけで、なんの実用的価値もない飾り壺にたとえているわけだ。
言い得て妙だが、この原題のままではさすがに客が来ないだろうな。
ロベールは独裁経営者だったのだが、工場労働者との対立がエスカレートし、ついにストライキが起こってしまう。
さらに、ロベールが心臓発作で倒れてしまう。
こりゃ大変だ。どうすればいいのかしら・・・。
ということで、急遽スザンヌが社長代理となって労使交渉や、工場の業務改善にあたる。
すると、彼女の素直なやり方が労働者たちの気持ちを掴む。
工場の能率は上がり、業績も大幅に改善する。皆満足して仕事をするようになる。
よかった、よかった。
しかし、このときにスザンヌは、かっての恋人で今は革新市長になっているババン(ジェラール・ドバルデュー)にアドバイスを求めていたのだ。
いいのかな、焼けぼっくりに火がついてしまわないかな・・・?
とそこにロベールが退院してくる。儂の工場はどうなっているんだ?!
この映画はなんといってもドヌーブありきである。
このとき67歳の大御所。さすがの貫禄のあるマダム感! 並ではない。
だいたいが冒頭場面は、真っ赤な上下のジャージ姿でのジョギング姿。
こういうのを見せておいて、そのあとで豪華なドレス姿を披露する。おお、ゴージャス!
相手役のドバルデュー。こんなに(醜く)太っていたっけ?
もうちょっと渋くて格好好イメージだったのだがなあ。
基本的にはコメディタッチの人間ドラマなのだが、オゾン監督だけあって毒がいっぱい含まれている。
若い日のドヌーブ様はいきなり野外でことにおよんでみたりもする。おお、おお。
そして夫の意外な告白に、それ以上の意外な告白で応えるドヌーブ様。
息子が惚れた彼女との結婚は許すわけにはいかん、あの娘は実は浮気した儂の娘なんだ。
いえ、惚れ合っているのだったら結婚させてあげましょうよ。
何を言っている、兄妹で結婚させるわけにはいかんだろうが。
いえ、大丈夫よ、息子はあなたの子どもではありませんから・・・(汗)。
物語はどんどんとすすむ。
工場の実権をめぐって、株主総会でのロベールとスザンヌの争い。
そして、革新市長ババンとも対立したスザンヌは国会議員選挙に立候補もしてしまう。
さあ、どんどんやるわよ。もう私は飾り壺なんかじゃないわよ。
ドヌーブ様の映画ですが、上品にお高くとまった映画ではありません。
あれよあれよという痛快マダムの物語でした。
さすがオゾン監督。