あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「ファンタスティック・プラネット」 (1973年) 異形の造形美のSFアニメ

1973年 フランス 73分
監督:ルネ・ラルー
(アニメ)

異形の惑星物語。 ★★★★

 

まずはポスターを見て欲しい。この絵の独特のタッチに惹かれてしまう。
ローラン・トポールという漫画家の絵をアニメにしているとのこと。
原作はフランスのSF小説のようだ。

 

この狂気を思わせる絵に惹かれてしまう。
異形の者たちが次々に登場してきて、それなのに人間だけは妙にリアルに表情まで描かれている。
そのアンバランスさがまた不気味である。

 

物語の舞台は惑星イガム。
そこには青い肌に赤い目をした巨人ドラーグ族と、彼らから虫けらのように扱われている人類オム族が住んでいる。
ある日、ドラーグ族の娘ティバは、ドラーグ人の子どもたちにいじめられているオム族の赤ん坊を拾う。
ティバは赤ん坊をテールと名付け、ペットとして飼うことにする。

 

この星では人間はゴキブリのように扱われている。
人間が首輪を付けられ、巨大人に飼われているのはなかなかシュールな絵柄。
少年になったテールはいつも悲しそうな顔をしている。
こういう映像を見ていると、何気なく蟻を踏みつぶしたり、犬に首輪をはめたりしている人間の傲慢さを思ってしまう。

 

物語にはそれほど新鮮なものはない。
ティバのもとから逃げ出したテールは、ドラーグ族への抵抗をしている人間族の隠れ家へ。
そして共に抵抗運動をしていく。
と、言ってしまえばそれだけのことなのだが・・・。

 

しかし、この映画の価値は、なんといっても奇妙な絵で表されたその得意な世界観である。
ドラーグ族の姿ももちろんなのだが、次々に登場するよく分からない動植物とその生態。
どれも常識的な美意識を超えた、独創的な造形である。
そのあっけらかんとした造形には、どこか不安をかき立てるような不気味さもある。
どの場面を切り取っても画集の一頁になりそう。

 

一説には「風の谷のナウシカ」 のオームなどにも影響を与えたとのこと。
なるほど。
ことさらに大げさなエンディングが用意されているわけでもなく、へ?これで終わり? といったあっけなさも、かえって潔かった。

 

アニメーション作品として初めてカンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞しています。