2007年 中国 113分
監督:ジャ・ジャンクー
出演:チャオ・タオ
地味な人生ドラマ。 ★★
中国、長江の景勝地・三峡の畔にある古都・奉節が舞台。
そこに向かう船に乗っている炭鉱夫サンミン(チャオ・タオ)がいた。
薄汚れたランニング・シャツ1枚の姿で、持参しているお金もほとんどないようだ。
他の乗船客も貧しげな服を着た者ばかり。当時の中国の田舎での生活レベルってこんなものなのか。
その古都・奉節は建設が始まっている三峡ダムによって水没することになっていた。
工事の進捗によって次第に河の水位が上がってきている。
実はサンミンは別れた妻子を探しに16年ぶりに故郷を訪れたのだが、妻子が住んでいた場所はすでに水没していた。
途方に暮れる無口なサンミン。見ているこちらまで哀れな気持ちになってくる。
妻子の行方を捜し続けるサンミンは、周りの建物の解体工事に雇われて生活していく。
一方、2年前から音信不通の夫を探すために奉節にやってきたシェン・ホン。
働き先の工場を探しあてて再会した夫には、すでに愛する人がいたのだ。
途方に暮れる勝ち気なシェン・ホン。
とても地味にリアルに人々の生き様を描いていく本作なのだが、時折り、えっ、これ何だ?という映像が入ってくる。
シェン・ホンは気づかなかったのだが、彼女の向こうの空をUFO(!)が飛んでいくのだ。えっ?
ある場面では、ビルが突然ロケットのように煙を吐いて飛んで行くのだ。えっ?
しかし,それらの出来事を目撃した人は誰もいないようなのだ。
向こうの方で建物の間に張られたロープを綱渡りのように歩いていく人もいた。
それらの不思議な映像が回収されることもいっさいなし。物語にはまったく素知らぬ風でそんな映像が紛れ込んでくるのだ。
う~ん、監督の狙っているものは何なんだ?
そういった奇妙な映像が挟み込まれていることを除けば、映画は大変に地味。
大きな事件が起こることもなく、淡々と妻子や夫を探しに来た二人の人物を描いている。
その二人の人生も交叉することはなかった。
唐突な映像も含めて、最後まで面白さというか、良さが掴みきれなかった作品だった。
ヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞しています。
日本でもこの年のキネマ旬報のベストワンに選ばれています。ふ~ん。