1984年 94分 イギリス
監督:スティーブン・フリアーズ
出演:ジョン・ハート、 ティム・ロス、 テレンス・スタンプ、 ラウラ・デル・ソル
クライム・ロードムービー。 ★★★
強盗仲間を裏切って司法取引に応じた男ウイリー(テレンス・スタンプ)がいた。
その事件の10年後、スペインに潜伏していたウイリーは復讐のために雇われた2人の殺し屋に拉致される。
彼らはウイリーをパリまで連れて行くことになっていたのだ。
車に乗りこんだ3人だが、非情な兄貴分の殺し屋ブラドック役にジョン・ハート。
クールで無口。カミソリのような雰囲気で終始張りつめている。
非情なのだが、ときに非情になりきれない優しい部分も見せる。
自問自答するような屈折した内面をうかがわせて、複雑な人間性がとても面白い人物造形になっていた。
その子分マイロン役に当時23歳のティム・ロス。本作がデビュー作。
さすがに若い。つるりとした顔の感じで、えっ、これがティム・ロス?とびっくりしてしまう。
金髪サングラスで、狂犬のように切れまくる、吠えまくる。
軽薄で、調子がよいのだが自信もない。そんなチンピラを上手く演じていた。
そして拉致された肝心のウィリーだが、もうじき殺されるというのにどこか余裕をみせている。
哲学的な言葉を発したりもして、途中で逃げることができる状況になった時も、平然と滝を眺めたりしている。
死は自然現象だ、誰にでも訪れる人生の通過点でしかないのだよ。
この3人のそれぞれの歯車が微妙に噛み合ったり、ずれたりして、旅が続く。
オープニングの音楽はエリック・クラプトン。
そして劇中の音楽はパコ・デ・ルシアのフラメンコ・ギター。その音色がスペインの荒涼とした大地の風景によくマッチしていた。
彼らは途中で留守にしていたはずの仲間のマンションに立ち寄る。
するとそこには愛人を連れ込んでバカンスを楽しんでいる太っちょギャングがいたのだ。
ブラドックは情け容赦なくその太っちょ男を殺し、顔をみられた愛人(ラウラ・デル・ソル)を一緒に連れて行くことにする。
妙にセクシーな女性を交えた4人となった彼らの旅行きがさらに続く。
途中で立ち寄ったドラッグストアではつい凶行に及んでしまったり。
それにしても、国境をどうやって越えるのだ?
挙げ句の果てにブラドックが出した結論は? なんか突飛な決断のようにも思えるのだが、そこが彼の複雑な心情なのだろう。
それに、ブラドックはなぜ最後まで女を殺さなかったのだろうか。
単に殺すタイミングを逸してしまっただけ?
それならばなんとも皮肉な結末になっていたな。
どこかゆる~い不思議な雰囲気のサスペンスものだった。
結末も、ほらほら言わんこっちゃない、さっさとけりをつけておけば好かったんだよ的だが、そこがこの映画の持ち味だった。
この映画、あのクリストファー・ノーランが好きな映画10本のひとつとのこと。
へえ。どこを彼はそんなに気に入ったのだろうか。興味深いね。