2024年 109分 日本
監督:武内英樹
出演:永野芽郁、 佐藤健、 阿部サダヲ、 芦田愛菜
擬人化医療ドラマ。 ★★
コミック原作の医療もの、ということで敬遠していた。
しかし評判がいいようだ。映画館でもいつまでも上映している。
ということで、時間が噛み合ったので鑑賞してみた。
人間の体内には37兆個もの細胞が存在しているとのこと。
それらにはそれぞれの役割分担がある。たとえば酸素を運ぶ赤血球、細菌と戦う白血球、傷口を治す血小板などなど。
この映画はそれらの細胞たちを擬人化して描いている。
主人公は新米の赤血球(永野芽郁)と、細菌やウイルスなどから身体を守るためにナイフを振りかざして頑張る白血球(佐藤健)。
擬人化した外観も、赤血球は細胞の形をもしたような赤い帽子を被っているし、白血球は顔面までの白塗り状態(佐藤健も頑張ったなあ)。
他にも、マクロファージやキラー細胞など、様々な血球細胞が大活躍をする。
体細胞も登場するが、彼らは基本的に場所を動かないから存在が地味な感じになるのはやむを得ないところか。
そうした体内細胞の活躍に加えて、この映画の秀逸だった点は身体の持ち主である親子(阿部サダヲ、芦田愛菜)を登場させていたこと。
健康的な生活を送る娘の体内細胞たちはいつも楽しくはたらいている。明るく陽の光がいっぱいに射している。
しかし不規則で不摂生な父親の体内細胞は、荒れ果てた環境で過酷な労働をさせられている。ゴミが散らばっている寂れた裏路地のイメージ。
これは視覚的に判りやすく、上手い表現だった。
愉快だったのは、お父さんの肛門ネタ。
阿部サダヲの便意を我慢する演技が迫真だった。
後半になると娘を白血病が襲うという大変な展開となる。
身体の中で癌化した白血球が正常な細胞たちをどんどん苦しめていく。
癌は外敵が攻めてくるのではなく、自分の身体の細胞が悪性変化して自分の身体を蝕んでしまう病気だ、ということをよく判らせてくれていた。
身体の中でおこなわれる白血病細胞との戦いは、現実世界での戦争場面を想起させるものとなっていた。
なるほどと思ったのが抗がん剤のイメージ化。
抗がん剤は癌細胞を倒すためのミサイル兵器として描かれており、辺り一面を焼け野原にしていく。
当然周りにいた味方も一緒に死んでいくのだ。なるほど。
片岡愛之助なんかも出ていて、雰囲気が「翔んで埼玉」っぽいなと感じたのだが、同じ監督だった。なるほどね。
あ、体内環境をブラックにするアルコールを今日も飲んでしまった。肝臓役の深キョンさん、ごめんなさい。
一つだけ苦言を。
白血球さんが侵入してきた細菌をしきりに”ぶっ殺すっ!”と言っていた。
身体を守るために必死になってくれているのはよく判るのだが、子供も観る(であろう)映画なので、ここは”退治するっ!”ぐらいにしておいた方がよかったのではないだろうか。
映像も迫力あるし、コミカルな部分も適度に入れていて、良く工夫されていた。
身体の中でこんなことが起きているのだと、楽しく学ぶこともできる(かもしれない)良心的な作品だった。
(しかし結論を一言でいうと、私は観なくてもよかったかなあ、だった。ただしこれは個人的な理由です。)