あきりんの映画生活

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「赤ひげ」 (1965年) 恥じることはないが、懲りるだけは懲りろ

1965年 日本 185分  
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、 加山雄三、 仁木てるみ

貧しい人々を治療した養生所の物語。 ★★★★

 

名作の誉れ高い本作だが、恥ずかしながら初めての鑑賞。
いやあ、たしかに前半の約1時間50分、休憩をはさんでの後半が約1時間10分。合わせて3時間という長尺だが一瞬の緩みもない名作だった。しかも面白い。
たいしたものである。

 

原作は山本周五郎の「赤ひげ診療譚」(未読)。
舞台となる小石川養生所は、現在の小石川植物園の一角に徳川幕府が建てた医療・福祉施設だったとのこと。
そこでは貧しい者や老人たちに施薬し治療を行っていたとのこと。

 

その養生所に長崎でオランダ医学を学び意気揚々と帰京した保本(加山雄三)がやってくる。
幕府お抱え医師になるつもりだった保本は、自分の意思とは裏腹に、半ば強引に養生所の医師見習いとして住み込まされる。
なんで私のような優秀な者がこんな貧乏くさいところで働かなければならないんだ?

 

赤ひげとみんなが呼ぶ無骨な所長(三船敏郎)は、拗ねたような保本の反発には一切動じない。
鷹揚としていて、とにかく貧しい病んだ人たちを助けることをすべての元としている。
はじめはふてくされていた保本だが、次第に赤ひげの医療手腕、そして何よりもその人間性に惹かれていく。

 

タイトルは「赤ひげ」で、もちろん三船が主演なのだが、物語としては加山雄三が演じる若い医者の保本が中心だった。
情熱と野心に溢れた、そしてそれ故の功名心や名誉欲も持っている若い医者の卵が、そんなことよりも大切なことに目覚めていく。

 

養生所へやってくるいろいろな患者のエピソードが描かれる。
いってみれば連作オムニバスのような感じで、それを貫く大きな物語が赤ひげに導かれていく保本の成長譚だった。

 

たとえば、養生所内の座敷牢に隔離されている美しい狂女(香川京子)の話。
彼女は3人もの男を殺しているのだが、女の色香に迷って油断した保本も危うく殺されそうになる。
間一髪で赤ひげに助けられた保本に、赤ひげは「恥じることはないが、懲りるだけは懲りろ」と言う。

 

保本は無麻酔でおこなわれる手術に立ち会って失神したり、死んでいく者たちの悲しい生い立ちや生き様も見ていく。
やがて赤ひげの往診にも付いていくようになった保本は、大名や金持ち商人の治療代はべらぼうに高額であることに驚く。
赤ひげはそのお金で養生所の貧しい人たちを支えていたのだ。酸いも甘いも・・・というところか。

 

前半のハイライトは赤ひげの一大アクション場面。
遊郭の高熱の少女を保護しようとした赤ひげたちを、大勢の雇われ用心棒たちが阻止しようとする。
すると、なんと赤ひげは片っ端から用心棒たちを倒してしまうのだ。
殴るわ、蹴るわ、関節技を決めて手足をぼきぼきと折りまくる。すごい。
終わった後に赤ひげは平然と、こりゃちとやり過ぎたわい。医者たる者がこんなことをしてはいかんなあ、と言い放つ。愉快。

 

後半は遊郭から助けてきた少女おとよ(仁木てるみ)の物語が中心となっていく。
呪詛に満ちたようなまなざしだった少女が、保本の看病によって次第に人間らしい優しさの感情を取り戻していく。
好い感じである。当時15歳だった二木てるみブルーリボン助演女優賞を最年少記録で受賞している。宜なるかな

 

エンディング近く、お抱え医師としての道が開けた保本はその話を断る。
そして養生所にこのまま残りたいと赤ひげに懇願する。
赤ひげは、きっと後悔するぞ、と言って、二人は並んで養生所の門をくぐっていく。

 

赤ひげを決してただ聖人君子と描くのではなく、どこか憎めない人間性のある人物として描いている。
後味もすがすがしく、傑作であった。
ヴェネツィア国際映画祭三船敏郎が男優賞を受賞しています。