あきりんの映画生活

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「サブウェイ123 激突」  (2009年)

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2009年 アメリカ 105分
監督:トニー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン、 ジョン・トラボルタ

地下鉄のっとり・サスペンス。 ★★★

ニューヨークの地下鉄運行指令室で勤務中のガーバー(デンゼル・ワシントン)は、途中停車してしまった列車へ応答を促す。
その列車は武装グループに乗っ取られており、19名が乗車した1両目だけを切り離して停車していたのだ。
武装グループのリーダーであるライダー(ジョン・トラボルタ)は、1時間以内に乗客の身代金1000万ドルを払え、期限に遅れれば1分ごとに人質をひとりずつ殺していく、と伝えてくる。

以前に同じ原作を映画化した「サブウェイ・パニック」も観ているはずなのだが、細かいところまでは憶えていない。
地下鉄職員をウォルター・マッソー、乗っ取り犯リーダーをロバート・ショーが演じていて、どちらもちょっとすっとぼけた雰囲気を漂よわせていたような気がする。

それに比べると、こちらは真面目そのもので、緊張感の連続である。
主役二人の圧倒的な存在感でみせる。
二人は無線で交渉のやりとりをするのだが、さぐり合いから始まり、次第にお互いの人間性を露わにしていく展開がすばらしい。

ジョン・トラボルタは「サタディ・ナイト・フィーバー」で観たときは、ただのイカレタお兄ちゃんだと思っただけだったのだが、「ソード・フィッシュ」での悪役ぶりを観て、おおっ、とびっくりした。
すばらしい役者に変貌していた。それ以来のファンである。
今回ののっとり犯役も、感情のままに切れやすい雰囲気をうまくだしていた。

デンゼル・ワシントンはこの役作りのために10kgも体重を増やしたとのこと。すごいものだ。
それに、あの鼈甲ぶちの眼鏡が効いていた。どこからみても市井のおじさん眼鏡である。
それなのに堂々としている。
苦渋に満ちた選択を迫られた場面で、それでも矜持を保とうとする態度には深い人間性を感じさせていた。

このように二人の人間性までをあらわしているところが、この映画をありきたりのパニックものではないものにしている。

(以下、ネタバレが混じります)

違和感を感じたのは、終盤になって普通の市民であるガーバーがあまりにも超人的な活躍をしすぎること。
普通の市民が、いきなり一般市民に銃を向けて車を横取りしてカー・チェイスをするか?
普通の市民が、あんなに冷静にのっとり犯と銃を向け合って対峙できるか?

しかし、デンゼル・ワシントンだと他の役のイメージが被ってくるので(たとえば同じトニー・スコット監督の「デジャヴ」の捜査官役とか)、なんか、騙されてしまう(笑)。
デンゼルだったら出来てもおかしくないかな、なんて(本当はおかしいんだけれど)。

それにいけなかったのは、暴走しはじめた地下鉄の扱い。
あれだけスピードがどんどん上がっていってるのに、管制室の誰も止めようとしないで、ただ制御板を見ているだけ。
観客をはらはらさせておいて、結局、誰も何もしなくても自動停止装置でぶじに止まる。
おいおい、皆が叫びながら必死に努力して、脱線か衝突をおこしてしまう間一髪でやっと止まる、そういう展開が必要だろうが!

それにいけなかったのが、ライダーの最終的な計画のあいまいさ。
金相場で天文学的な利潤をあげたのは良いとして、あれだけ乗客やガーバーに素顔をさらしておいて、どうやって逃げ延びるつもりだったのだろう。
それに、土壇場でガーバーに、さあ、その銃で撃ってくれ、と言うのはどういう心理からだったのか、さっぱりわからんぞ。

と、まあ、不満な点は幾つもあるのだが、展開はスピーディだし、最後まで面白く楽しめた。

ガーバーが牛乳を買って家路につくのも、お約束とはいえ、心地よい安らぎだった。
(死地になるかもしれない場に赴こうとする夫に向かって、帰りに牛乳を買ってくるように、と言う奥さんの言葉がよい。気を付けて死なないでね、なんて言うよりよほど詩情にあふれている。)