2004年 フランス 110分
監督:フレデリック・シェンデルフェール
出演:モニカ・ベルッチ、 ヴァンサン・カッセル
実在の女スパイを描く。 ★★★
フランスの情報機関・対外治安総局は、武器密輸をおこなう貨物船を爆破する作戦をたて、ジョルジュ(ヴァンサン・カッセル)はリザ(モニカ・ベルッチ)と夫婦を装い、モロッコへおもむく。
そして、リザはこの仕事を最後に組織から抜けることを考えていた。
全般にセリフは少なく(前ふりの冒頭の15分間は全くのセリフなしで、画面で魅せるようになっている)、人間関係やミッションを理解するのに、最初はややとまどう。
しかし、人間がしっかり描き分けられているので、すぐに筋は追えるようになる。
スパイ映画なのだが、意外なほど地味である。
もちろん格闘場面や、カー・チェイスなどもあるのだが、それは脇役的な扱いである。
物語の主軸は敵との攻防ではなく、非情な掟によって支えられている組織と、その掟によって翻弄される個人を追っている。
たとえば、船を爆破する任務を遂行するのだが、画面は爆薬を取りつけるところまでで、実際に船が爆破される場面は映らない。
ただ言葉で作戦が成功したと報告されるだけである。
実在したという女性スパイの運命を描くためにアクションがあるのであって、アクションを見せるために作られたスパイ映画ではない、ということだ。
だから、基本的に地味。
アメリカ映画に多い派手なスパイ映画とは違うので(良くも悪くもフランス映画的?)、それを期待する向きには肩すかしとなる。
しかし、組織を抜けようとするヒロインがたどる危うい道すじなど、いつの間にか肩入れをしてみている自分がいた。
ということで、評判はあまり良くなかったようだが、私には悪くない出来の作品であった。
ヴァンサン・カッセルと実際の夫婦だったモニカ・ベルッチは、このとき36歳。さすがに「マレーナ」のとき(32歳時)のような華やぎは少なくなっているが、中年にさしかかって、なお美しい。
(思わず息をのんでしまう場面もあるし・・・(笑))。
スパイものですが、アクションを主体にした映画ではない、ということを念頭にいれて観ましょう。