あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「さらば、ベルリン」  (2006年)

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2006年 アメリ
監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ジョージ・クルーニー、 ケイト・ブランシェット、 トビー・マクワイ

オールド・ファッションド・サスペンス。 ★★☆

終戦直後のベルリンを舞台にしたサスペンスで、モノクロで撮られている。画面サイズも小さく、40~50年代あたりの映画の雰囲気を出そうとしている。
終戦直後当時のフィルムをそのまま挟み込んでリアル感を出しているが、画面サイズが同じであるために上手くとけ込んでいる。

主人公のジェイク・ゲイスメール(ジョージ・クルーニー)はヨーロッパの戦後処理を話し合うポツダム会談の取材のため、ベルリンにやってくる。戦前にベルリン駐在記者をしていた彼は、人妻のレーナ(ケイト・ブランシェット)と不倫関係だった。彼がベルリンを訪れたのはレーナの面影を求めてだったのだが、その再会は思いがけないものだった。

アメリカ軍関係者、ソ連軍関係者が入れ替わり登場し、皆がそれぞれの軍服姿なので混同してしまう。
これは誰だっけかな? どんな立場の人物だっけ?
ということで、主人公たちが双方の軍関係者のあいだで置かれている立場が分かりにくくなってくる(私だけか?)。
もう少し登場人物を整理して欲しかった、あるいは説明して欲しかった。

レーナは戦中、戦後を生き抜くために、やむを得ない変貌をしていた。
レーナの恋人となっていたのはジェイクの運転手の米軍兵士タリー(トビー・マグワイア)だったのだが、大金を持った彼は何者かに殺される。

物語は、タリーの視点でまず始まり、彼の死後はジェイクの視点となり、やがて、謎が解き明かされる段階になるとレーナの視点となる。

タリーは憎たらしい小悪党なのだが、トビー・マグワイアが意外に上手く演じていた。
ケイト・ブランシェットは少しやつれた役柄で、生きるのに投げやりなような、それでいて実は生き抜くための信念を奥に秘めた暗い強さをあらわしていて、さすがであった、

彼女に翻弄されるジェイクは腕っ節も弱いし、ちょっと情けない役。
ルーニーって、真面目なんだけれどもちょっと間が抜けた役がよく似合う。

混乱して、無秩序で、それゆえに策略が渦巻いていた終戦直後のヨーロッパの雰囲気はよく伝わってくる。
モノクロにしたこともそれに寄与していて、悪くはない。
ただ、誰が観てもこれは「第三の男」と「カサブランカ」を意識していて、あまりに雰囲気を真似していると思われてしまうだろう。
(最後の場面、プロペラ機が背後に映る飛行場の場面など、そのままではないか!)
たしかにオマージュにはなっているのだろうが、あれだけの名作を抜けるかというとそれはやはり難しい。

レーナの悲劇は誰にも救うことは出来ず、重く辛い。
そんな戦争によって翻弄されたヒロインの苦悩を描きたかったのか、あるいは、それを下敷きにして翻弄された恋物語を描きたかったのか、そのあたりの狙いが絞りきれなかった。

そのために、映画全体が中途半端な感じになってしまったのが惜しまれる。