あきりんの映画生活

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「初恋のきた道」 (1999年)

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1999年 中国 89分
監督:チャン・イーモー
出演:チャン・ツィイー

素朴な純愛もの。 ★★★★☆

なんという美しさ。なんという可憐さ。
何回観ても、とにかくチャン・ツィイーの可愛らしさにつきる。
それに、中国の田舎の風景の美しさ。
物語そのものは単純なのに、それなのに、印象に残ってしまう作品。

私のモノローグではじまる冒頭の部分は、モノクロの沈んだ調子で描かれる。
父親の死を知らされた私は、久しぶりに老いた母の元へ帰ってきている。街の病院で亡くなった父の遺体を、母は、昔の風習に従って村までかついで連れて帰りたいと、頑なに言う。今は車に積んでかえるのが普通なのに。

母が父を連れて帰りたかった道には、特別な思いが込められていたのだ。
それは、母の初恋がやって来た道だったからだ。
ここから画面は明るいカラーとなり、まだ18歳だった母・ディ(チャン・ツィイー)が、村へ教師としてやって来た父・ルオと知り合ったころの回想へとつづく。

このモノクロからカラーへの転換は見事に成功している。
教師が好きになったディは、それとなくあとをつけたり、自分の作ったお弁当を食べてもらおうとしたりする。
ちょっとうがって考えればストーカーまがいの行為なのだが、ディがあまりに健気で一途なものだから、微笑ましい。
チャン・ツィイーが可愛いし・・・。

街に帰らなければならなくなったルオに、好物のきのこ餃子を食べてもらおうと、ディは追いかける。
木々の葉がきれいに黄色に色づいた山野を、ピンク色の綿入れのような服を着たディが必死で走る。
三つ編みにしたお下げ髪が揺れる。
手をあまり振らずに、身体を左右に振るような、ちょっと妙な女の子走りである。
それが、またなんとも可愛い。不細工なもんぺ姿だというのに。

目の見えないディの母親が、また好いんだなあ。
ディが転んだひょうしに割ってしまった丼を、ディの母親はわざわざ修理をしてもらう。
その丼は、ディがルオへのお弁当の餃子や万頭を入れていたものだったのだ。
買い直した方が安いよ、という修理職人に、母親は、「娘の心を持っていってしまった男がいるから、娘のために直してやらなくては」と答える。
じんわりとしてくる。

ルオが街から戻ると約束した日に、ディは雪の降り積もる道に立ちつくして帰りを待つ。
でも、ルオはいつまでも戻ってこない。ディは・・・。

回想場面が終わり、現在の話に戻ると画面は再びモノクロとなる。
ルオの教え子が集まってくれて、母の望み通りに、父の遺体はあの道をかつがれて村へ戻ってきたのだ。

最後に、若かった頃のディが明るいカラーで映し出されて映画は終わる。
ほのぼのとした心地よい余韻を残してくれる。好いねえ。

この映画のとき、チャン・ツィイーは20歳。しかし、あどけなさのような幼さを残す容姿は、中学生から高校生の感じである。
昨今の電車の中で平気でメイクをするようなジョシに、少しはディの一途で素朴な美しさを見習えと言いたくなってくる。

誰にでもお勧めできる映画の1本。