1953年 日本 136分
監督:小津安二郎
出演:笠智衆、 東山千栄子、 原節子、 山村総、 杉村春子
日本の私小説映画の代表作。 ★★★☆
あまりにも有名なこの映画、あらすじについて今さら書くこともない。
(「東京ラブストーリー」と勘違いした方、ごめんなさい。全く違うんですよ(笑))
終戦後8年目の物語。そのころ、自分たちはどんな生活をしていたのだろうと考えるが、あまりに幼かった頃のことなので、何も覚えていない。
老夫婦が東京見物をする場面があるが(おそらく「はとバス」に乗ったのだろうな)、銀座の服部時計店が映っていた。
それに地下鉄の駅があったのには意外な気がした。もうあの頃に地下鉄が走っていたんだ。
小津監督の映画と言えば、笠智衆の独特のゆっくりとした、棒読みのようにも聞こえる台詞がすぐに思い浮かぶ。
小津監督は、俳優に演技をするなと言ったという。生のままの貴方を撮りたいのだから。と。ふ~む、そんなものなのか。
低い視線ですえられたカメラの向こうで(まるで部屋の中にいる猫の視線である)、人が動いている。ただそれを描写している。
この作品ではやさしく接してくれる義娘役の原節子が話題となるが、今回観て一番印象的だったのは長女を演じた杉村春子だった。
両親に冷たい娘として描かれているが、自分も仕事に追われている子供の本音が上手く表現されていた。
実際にはこういうことにならざるを得ないよなあ、と思ってしまったりもする。
最後近く、尾道の高台からの風景がしみじみとする。
いよいよ最後の場面、笠が一人で座っている姿を横の低い視点から捉えている。
笠が画面の左を向いて座っている位置が画面のやや左寄りなので、背中の空間の方が広いという構図である。
笠の背後に広がるもの、これからはじまる何か淋しいものを感じさせる構図だった。
正直なところ、小津安二郎の評価が何故こんなに高いのか、よく理解できない。
この映画も、若い頃に観たときは淡々とした物語で退屈しかけたほど。何故、これが名作なんだ?と訝しく思ったものだった。
しかし、この歳になって見なおしてみると、さすがだと思ってしまった。
たしかに名作だ。