あきりんの映画生活

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「瞳の奥の秘密」 (2009年)

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2009年 スペイン 129分
監督:ブアン・ホセ・カンパネラ
出演:リカルド・ダリン、 ソレダ・ビジャミル

奥行きのあるサスペンス。 ★★★☆

舞台はブエノスアイレス。あまり馴染みがない街だけれども、映画を楽しむうえでは戸惑うことは全くなし。
ただ、アルゼンチンでは激しい政治変遷があったようで、軍事政権が横暴を極めたりしていた時代もあったようだ。

そんな時代をはさんでの25年間の物語がくり広げられる。
裁判所を定年退職した下級官吏ベンハミン(リカルド・ダリン)は、25年前の未解決の殺人事件のことを小説に書こうとする。
そして、当時の女性上司だったイレーネ(ソレダ・ビジャミル)に会いに行く。

25年前の事件は、美しい人妻が乱暴されて殺される、というもの。
年余にわたる地道な捜査で犯人が判明するのだが、やがて理不尽なことが起きる。そのまま事件は封印されてしまう。
そんな馬鹿な・・・と観ている者は誰でも思う。しかし、それが当時のアルゼンチンの情勢だったのだろう。

それから25年、この殺人事件の顛末を縦軸にして、横軸には同じ25年前からのベンハミンの恋心を描いている。
身分違いとも言えるエリート上司、イレーネへの思いだ。
二人はお互いに踏み出すことができずに、別れ、それぞれの家庭を築いたのだった。そして、今、25年を経てふたたび会っている。

25年前の殺人事件をもう一度探っていくわけだが、その結果、当時の政治的事情でうやむやになってしまったことにも決着が付く。
そして、この映画の核は、なぜ25年後の物語にしたか、という点にある。
まったく事情は異なるが、あの衝撃の韓国映画オールドボーイ」と同じような感慨に襲われる。

ベンハミンのタイプライターは”A”が壊れていて打てない。
夢うつつで”Timo"(怖い)という言葉を書きつける場面がある。これはなんだろう?
事件が解決して、その言葉にこれまで打てなかったAの文字を書き加えると、”TiAmo"(愛)になる。
洒落ているなあ。

サスペンスの方は、ああ、そうだったのか、という、ちょっと憂鬱になるような結末。
それにひきかえ主人公の方の愛の結末は、よかったね、というほのぼの結末。
意を決して部屋を訪れたベンハミンを見て、何も訊ねずにイレーネが「楽じゃないわよ」という場面がじーんときた。大人の恋だな。

アカデミー外国語映画賞をとっています。