あきりんの映画生活

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「秘密」 (1999年)

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1999年 日本 119分
監督:滝田洋二郎
出演:小林薫、 広末涼子、 岸本加代子

憑依もの、とはいってもオカルトではありません。 ★★☆

邦画はそれほど観ないのに、たまたま観た邦画では、「ゼロの焦点」「おくりびと」それに本作と、やけに広末涼子が出てくる。
私は彼女が嫌いなわけではないのだが、妻とか娘は嫌がっている。いわく、「どんな表情をすると可愛く見えるか知っていて、不自然にその表情をする」
ふーん、そうかなあ。

それはさておき。
物語は、原作が東野圭吾だけあって、非常に面白い。
妻(岸本加世子)と娘(広末涼子)がバスの転落事故に遭遇し、妻は亡くなり娘が生き残る。ところが、意識不明だった娘の身体に戻ってきたのは妻の意識だった。

姿形は年頃を迎えた娘なのだが、言葉や仕草は長年連れ添った妻そのもの。顎の下のヒゲのそり残しがないかどうかを調べる妻の仕草の、自然なこと。
その仕草から、夫(小林薫)も娘の身体に戻ってきたのは妻だということを自然に受け入れる。

面白かったのは、夫婦生活をどうするかと二人で悩むところ。
意識は妻なのだから夫婦生活をしても不思議ではないのだが、身体は娘である。夫として、父親として、これは悩むよなあ。これは深刻だ。

周囲には、娘の身体に宿っているのが妻の意識であるということは”秘密”にして、二人は生活を続けていく。
ところが何年かして、ときおり、娘の身体に娘の意識が戻ってくるようになる。
そして妻の意識があらわれている時間が次第に少なくなっていく。

娘の身体に娘の意識。通常の状態に戻っていくのだから、それが一番自然なわけなのだが、長年連れ添った妻の意識がなくなっていくのも淋しい。
子離れ、ならぬ妻離れが上手くできない夫を、小林薫がなんとも良い雰囲気で演じていた。

やがて高校生だった娘も大学を出て、結婚をして家を出て行くことになる。
ここまでの物語も充分に面白いのだが、東野圭吾が巧みなのはここからの最後。
もうひとつの”秘密”が最後に明かされる。

そうか、そうだったのか。
何だか切なくなってくる。邦画もよいねえ。
薄い唇の広末涼子は、たしかにどの映画でも同じ演技だけれど、悪くなかったよ。