2006年 デンマーク 119分
監督:スザンネ・ビア
出演:マッツ・ミケルセン
人間ドラマ。 ★★★
ハル・ベリーとデル・トロの悲痛な表情が印象的だった「悲しみが乾くまで」。その監督、スザンネ・ビアがハリウッドに渡る前に故国で撮った作品。
この作品の前に撮った「ある愛の風景」は、「マイ・ブラザー」としてハリウッド・リメイクされている。
インドで孤児たちの救援事業をしていたヤコブ(マッツ・ミケルセン)に、デンマークの実業家ヨルゲンから巨額の資金援助の申し出が舞い込む。
その条件は故国デンマークで直接面会する、というもの。
なんだよ、面倒くさいなあ。しかし、孤児を助けるために資金援助の申し出は断れないしなあ。
大富豪との面談を終えたヤコブは、今度はヨルゲンから週末に行われる娘の結婚式に強引に招待される。
なぜ自分のような他人を娘の結婚式に招待するんだろう? でも資金援助をしてもらうためには断り切れないヤコブ。
すると、ヤコブが結婚式場で見かけたヨルゲンの奥さんは・・・!
振り向いてヤコブを見つけた奥さんの驚きの表情は・・・!
はじめのうちは、何故こんなことをするのだ?といったヨルゲンの行動に、ある意味があったことが少しずつ分かってくる。
彼はなぜヤコブを本国での面会を求めたのか。彼はなぜヤコブを娘の結婚式へ招待したのか。そして、彼はなぜある提案をしたのか・・・。
スザンネ監督は、「悲しみが乾くまで」もそうだったが、大きく心が揺れ動かされるような状況を描き出す。
心理描写の監督である。
この映画でも登場人物の極端な顔のアップがところどころで出てくる。
動揺する心の動きが表情からにじみ出てくるようで、これ以上はないぐらいの映画らしい表現方法といえる。
それがまた効果的に使われている。
(以下、ネタバレ気味になります)
この映画は、家族の血のつながりとはなにかを考えさせる。
ヨルゲンの決断はそれをなによりも大切に考えたからだろう。
普通に考えれば、娘はちゃんと結婚したのだし、妻には充分な財産があるのだし、それほど困ることもないようなのだが・・・。
そして、もうひとつの家族、ヤコブとインドの子ども達のように、血はつながっていないけれども家族ともいえる関係の大切さについて考えさせる。
ヤコブはどちらの家族を選ぶ?
なにか洗練されていない荒削りの所もあるのだが、謎の説明を小出しにしてくるという巧みなストーリー展開でぐいぐいと引っ張っていく。
アカデミー外国語映画賞にノミネートされています。