あきりんの映画生活

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「ノルウェイの森」 (2010年)

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2010年 日本 133分
監督:トラン・アン・ユン
出演:松山ケンイチ、 菊地凛子、 水原希子

村上春樹のベストセラーの映画化。 ★★★

感想を書くのがとても難しい映画。
もちろん、それは村上春樹の原作小説との兼ね合いからくることである。
村上春樹のファンである以上は(私は処女作の「風の歌を聴け」から初版本を買っていた)、どうしても彼の小説世界、あの独特の雰囲気を求めてしまう。
映画である以上は、その再現にはなっていないことは当然であるのだが。

学生運動が盛んだった時代、東京で学生生活をおくるワタナベ(松山ケンイチ)は、自殺した親友、キズキの恋人、直子(菊地凛子)と再会する。
あてもなく東京の街をさまよったりする二人だったが、やがて直子の心は壊れてゆき、京都の療養所に入院してしまう。
療養所へ直子を訪ねていくワタナベ。そんなワタナベの前に、明るく活動的な緑(水原希子)が現われる。

上映時間の関係で仕方がないことだけれども、小説にあったいくつかのエピソードは省略されている。
問題は、その状態で映画としてのできあがりはどうか、言いかえれば、監督(あるいは脚本家)は何を省略して物語にしたかったか、ということになる。
監督は映画としての「ノルウェイの森」を作りたかっただろうし。

実は、松山ケンイチ菊池凛子もそれほど好きな俳優ではない。
それでも映画としては悪くなかったと思う。
草むらを渡っていく風の光景が情感に溢れていた。
なによりも、とらえどころのない自己の感情に揺られている登場人物達の雰囲気がよかった。

映画の登場人物の台詞としては妙に硬い言い回しがあったりするのだが(これは小説のなかの言い回しに似ていると思えた)、映画の雰囲気には合っていた。

村上春樹の長編小説の映画化としては、「風の歌を聴け」に次いで2作目のはず。
あの映画の評はひどいもので、村上春樹も気に入らなくて、そのためにそれ以後は自身の小説の映画化をおこなわなかったと言われている。
しかし、私はあの映画もわりと好きだった。
(ほかには、短編小説「神の子供たちはみな踊る」だけがアメリカで映画化されていた)
後日の註:他にも短編小説の映画化では、「トニー滝谷」「森の向こう側」がありました。ブロガーさんの指摘で気がつきました。

この映画、小説世界そのものを求めると、そりゃあがっかりするかもしれない。
でも、これは映画の「ノルウェイの森」なのだと思って観れば、好いのではないだろうか。
ノスタルジックな風が吹いているのを感じることが出来たし…。