1997年 アメリカ 121分
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、 ジーン・ハックマン、 エド・ハリス、 ジュディ・ディビス
サスペンス。 ★★☆
クリント・イーストウッドが監督兼主役を務めて作り上げた堅実な娯楽作品。
プロの泥棒ルーサー(クリント・イーストウッド)は、大富豪のサリバン邸へ忍び込む。
一家は旅行中のはずだったのだが、若い後妻のサリバン夫人が大統領リッチモンド(ジーン・ハックマン)と一緒に帰宅してくる。
この導入部から緊迫感があって上手い。
観ている者は、あわてて隠し部屋に隠れるルーサーと一緒になってことの成り行きを見守ることになる。
すると・・・、痴話げんかの末にナイフで大統領を刺そうとした夫人を、駆けつけたシークレット・サービスが射殺してしまう。
醜聞を恐れた首席補佐官(ジュディ・デイビス)は、事件の隠蔽工作を始める。お主も悪よのお。
アメリカ映画では、よく平気で大統領を悪役に仕立てたりする。
CIAやFBI、シークレット・サービスの内部腐敗ものも、かなりの数の作品があるのではないだろうか。
こういう権力を持ったものが悪事を働き、通常は弱者である一般市民がその権力に対して戦うという構図、これは単純に応援したくなるわけだ。
事件の一部始終を目撃したルーサーは、証拠となるナイフを持って逃走する。
大統領のあまりの卑劣な厚顔無恥さに、ルーサーは身の危険も顧みずに悪事を告発しようとする。ここが恰好いい。
しかし、相手は強大だぞ。ルーサーを殺人犯に仕立て上げようとするばかりか、狙撃手まで配置してルーサーを亡き者にしようとする。
ハックマンの俗物ぶりも板に付いているのだが、そのほかの脇役が好い。
永年ルーサーとは不仲だった娘の弁護士や、ルーサーは大泥棒だが殺人をする人間ではないと信じてくれる腕利きの刑事(エド・ハリス)。
そして、憎らしい首席補佐官もきっちりと魅せてくれる。
面白く観ていたのだが、若干のアラも目に付く。
狙撃手があんなに銃身を窓からつきだして狙うかあ? 見つかってしまうぞ。
サリバンはルーサーの立ち回り先をどうやって突き止めたのだ? つじつまが合わないぞ。
残念だったのは結末、ルーサーが反撃を開始してから大詰めを迎える件がよろしくない。
せっかく導入部の設定から面白かったのに、こんな凡庸な結末、解決にもっていくなんて、イーストウッド、どうしてしまったのか?
惜しい!
(余談)
あのドラマ「24」で黒人大統領を演じる人がシークレット・サービスだったり、大統領夫人を演じる人も出ていたりして、これも面白かった。