あきりんの映画生活

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「メランコリア」 (2011年)

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2011年 デンマーク 136分
監督:ラース・フォントリアー
出演:キルステン・ダンスト、 シャーロット・ゲンズブール、 キーファー・サザーランド

SF仕立ての憂鬱。 ★★★★

冒頭にスローモーションで撮られた8分間ほどの、象徴的な映像が流れる。
これが不思議な、詩情あふれる映像で、これから始まる物語が理屈で見るようなものではないことを暗示している。

仰向けの姿勢で小川に沈んでいくウェディング・ドレスの女性。
子供を抱いてゴルフ場の芝生を歩む女性、一歩ごとに脚が芝生に深く潜り込む。
大きく正面から映された女性の背後では、空から次々に鳥がゆっくろと落ちてくる。
そして、地球に巨大な惑星メランコリアが衝突して砕けていく場面…。 

映画は二部構成で、第一部はまず妹のジャスティンの章。
新婦のジャスティン(キルステン・ダンスト)と新郎のマイケルは、姉のクレア(シャルロット・ゲンズブール)とその夫ジョン(キーファー・サザーランド)が準備してくれた盛大な結婚パーティに出席する。
しかし、情緒不安定なジャスティンの奇異な振る舞いで、せっかくのパーティは無残な幕切れとなる。

それから7週間が経ち、第二部は姉のクレアの章となる。
惑星メランコリアは次第に地球へと迫り、クレアは衝突の恐怖から落ち着きをなくしていく。
夫ジョンはメランコリアは衝突しない、地球の近くを通り過ぎるだけだと、クレアを落ち着かせようとするのだが。

地球に接近しているという惑星の名前が”メランコリア”。
この惑星の存在が人々を憂鬱にさせているのだろう(名前からして憂鬱 苦笑)。

この映画では、地球規模のこれだけの一大異変が起きているのだが、他の人がどうしているのか、他の地方がどうなっているのか、などということは一切映さない。
ただ、この事態に遭遇している姉妹(+夫、子供)のあり様だけを映し出す。
もちろん、実際にこんな巨大惑星が接近すれば、引力の影響などによる異常気象がおこったりするわけだが、そういったことも起こらない。

あくまでも惑星が衝突するかもしれないという精神的な恐怖を描いている。
この異常事態との心理的葛藤だけを描きつづける。

幼い子供が作る惑星メランコリアの観測器具が面白い。
棒の先につけた針金で輪を作っただけのもの。
しかし、これが実に効果的に使われている。
惑星メランコリアがどうなっているのかを言葉で説明するよりも、画像で映す方がはるかに衝撃的で説得力があるということがよくわかる。

”惑星メランコリア”というのは、人の心の中に在るなにものかの象徴と捉えることも可能だろう。
こんな風に、言葉による解釈はいろいろとできる作品。
しかし、映画なのだから、映像が語ってくれればそれでいいわけだ。

もう冒頭のスローモーションの画像だけで、すっかりやられてしまった。