1956年 アメリカ 105分
監督:アナトール・リトバク
出演:イングリッド・バーグマン、 ユル・ブリンナー
人間ドラマ。 ★★☆
ロシア革命によりロマノフ王朝は崩壊し、ニコライ2世の一族は全員が銃殺されたことになっている。
しかし皇女アナスタシアだけが奇跡的に生き残ってどこかで生存しているという噂はかなりあったらしい。
その皇女を発見して莫大な賞金を手に入れようとする山師たちも大勢いたとのこと。
そんな山師のひとりであるボーニン(ユル・ブリンナー)は、アナスタシアに似たアンナ(イングリッド・バーグマン)に目をつける。
精神的にももろいアンナは、高圧的なボーニンに指示されるままにアナスタシアに化けるための訓練をしていく。
アンナ・アンダーソンというのは実在した女性で、王族偽装者としてはもっとも有名だった人物とのこと。
この映画のクライマックスは、そのアンナが亡命していた叔母に面会するところ。
アナスタシアの偽物ばかりがあらわれることに怒り気味だった叔母だったが、アンナがもらした一言で、もしや、この娘こそ本当に・・・?!と思い始めるのだ。
冷酷無慈悲にアンナを利用しようとしていたのに、いつのまにかアンナに惹かれていくボーニンを、笑顔をまったく見せないブリンナーが格好良く演じている。
無防備に眠ってしまったアンナにシーツを掛けてやり、灯りを消して部屋を出ていくところなんかは、紳士のダンディズムの骨頂。
それにいつも思うのだが、ブリンナーは姿勢がいいなあ(感心するのはそんなところかよ 笑)。
映画の冒頭では惨めな姿で登場するバーグマンだが、次第に洗練されていく様は、まるで「マイフェア・レディ」と一緒。
この映画はバーグマンがアメリカ映画界に復帰した第一作。
そして、この作品で2度目のアカデミー主演女優賞を受けています。
(以下、ネタバレ気味)
アナスタシア伝説は、いわば日本の義経伝説みたいなもの。
この映画のポイントは、どうせ偽物だろう、とボーニン自身も思っていたアンナが、実は本物だった、というところ。
そして、その本物のアナスタシア皇女が・・・というエンディング。「ローマの休日」とは違うんだよねえ。
それにしてもこの邦題はまぎらわしい。「追憶」とかと間違えそう。
最近の”原題そのままカタカナ邦題”にはうんざりしているのだが、この映画ではさすがに原題そのままの「アナスタシア」でよかったのでは?