1996年 デンマーク 158分
監督:ラース・フォン・トリア
出演:エミリー・ワトソン、 ステラン・スカルスガルド
絶望的な愛と希望の映画。 ★★★☆
すごい映画だった。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」で暗い衝撃を受けたラース・フォン・トリア監督の、その前の作品である。
やはりこれも暗い衝撃の作品だった。
2時間半を超える長尺だが、映画は8章に分かれていて、だれることはない。
最後まで緊張感が続く。
舞台は荒れた土地のイメージのスコットランドの海沿いの寒村。
無垢で、信仰篤いベス(エミリー・ワトソン)は、海上油田で働くヤン(ステラン・スカルスガルド)と結婚し愛し合う。
ヤンを愛するあまり、寂しい毎日のベスは、ヤンが早く陸へ帰るように神に祈る。
するとヤンは帰ってくる。しかし、それは半身不随の怪我をしたための帰還だった。
ベスは自分で神に問いかけ自分で答え、それを神との対話と信じている。
敬虔なクリスチャンのようでもあるが、見ようによっては精神的にどこか逸脱しているところがあるようにも見える。
とにもかくにも、ベスは神と共にあることをすべての基礎にしている。
ベスは自分の祈りのせいでヤンが半身不随になったのだと、自分を責めつづける。
そんなベスに身動きもできないヤンは、セックスのできない自分の代わりの誰かとセックスをしてほしい、そしてその様子を聞かせてほしいと懇願する。
そうすれば自分は間接的にベスと愛し合うことができるという。
ベスはヤンのためにみだらな服を着て見知らぬ男たちに抱かれる。
男たちに抱かれると、悪化したヤンの容態が持ち直す。
ヤンが危篤になるたびにベスは娼婦のように男たちに身を任せる。
それはベスにとって罪を犯してしまった者の苦行のようなものだったのだろう。
そのみだらな行為が狭い村中で取りざたされ、ついにベスは教会からも破門されてしまう。
唯一の心の拠り所だった神の家に入ることも拒絶されてしまうのだ。
ついには・・・。
観ていた私の精神がどんよりと重く垂れ込めて、映画が終わった。
あんなふたつの鐘ぐらいでは、とてもではないが気持ちは晴れないぞ。救われないぞ。
この映画といい「ダンサー・イン・ザ・ダーク」といい、フォン・トリアの映画は観た者の気持ちを徹底的に打ちのめす。
鬱状態の人は観ない方がよいです(フォン・トリア監督自身は鬱だそうです)。
それぐらいに重くのしかかってくる映画です。