2014年 日本 138分
監督:山田勇男
出演:寺十吾、 中村栄美子
大正ロマンのインディーズ映画。 ★★★
低予算のインディーズ映画。
チラシやポスターを作る費用や、劇場公開関連費などのカンパも募って作られたようだ。
8月に渋谷ユーロスペースでの単館上映。たしか1日1回だけで2週間ぐらいだったか。
このあと、全国の何カ所かで上映されるらしい。
時代は関東大震災をまたぐ大正時代。
無政府主義者の集団「ギロチン社」に集まった若者たちの、青臭い理想を掲げながらも無鉄砲で投げやりな行動を描いていく。
彼らは大企業を恐喝しては資金を稼ぎ、要人暗殺などのテロを企てる。
しかし、その日常は酒と色に溺れてもいる・・・。
テント小屋芝居のような雰囲気の映画。
それもそのはずで、監督は寺山修司が主催していたあの「天井桟敷」の出身だということ。
出演者も舞台畑の人が多かったようだ。
唐十郎の赤テント「状況劇場」は好きで、公演も十回近く見に行ったことがある。
その「状況劇場」と肩を並べていた「天井桟敷」出身の監督と言うことで期待していた。
たしかに映像には面白いものがあった。
たとえばヒロインが一人で切り盛りしている(謎の)蕎麦屋「指切り」の映像。
河原の横の野原にある屋台の飲み屋の映像。
唐突な風景なのだが、ある種の情感を伝えてきて、好かった。
(風景としては、同じ大正ロマンの鈴木清順「チゴイネルワイゼン」のそれに、どこか似ているような気がした)
「ギロチン社」に集まる登場人物たちの行動にはあまり共感できなかった。
理想と現実の狭間で彼らは支離滅裂だった。
しかし、この映画は彼らの行動に正当性を与えようとしたりしていないことは明かだろう。
むしろ、人間の愚かさ、弱さ、哀しさみたいなものに焦点が当たっているのだろう。
登場人物たちには実際のモデルがいたようで、最後のテロップでは彼らのその後が記されていた。
いわく、死刑、終身刑、獄中病死、自死などなど。
ただ物語の要となる(謎の)蕎麦屋の娘は創作人物だったようだ。
出演者はほとんどが舞台の人。知らない人ばかり(苦笑)。
演技や台詞は、やはり舞台役者独特のアクがあった。
舞台では少しオーバーな演技でないと栄えないのだろう。しかし映像にすると、そのあたりはやや違和感があった。
中には、あの「赤色エレジー」のあがた森魚もいて、満州国設立の黒幕ともされる甘粕大意に扮していた。
漫画家のつげ忠男(つげ義春の弟)も出ていたようだが判らなかった。
ラスト、時代を超えた現代の「カフェ南天堂」にこれまでの出演者が集まって、大杉栄を忍びながら、ジンタのリズムに乗って踊りまくる。
大正ロマンそのもので、このラストの大円団は好かった。
この魅力的なポスターは、私の大好きなイラストレーターの宇野亜喜良。
彼の画集は2冊ほど持っている。
宇野亜喜良は「天井桟敷」のお芝居のポスターも書いていたし、寺山修司との合作の本も何冊も出していた。
機会に恵まれなければなかなか観ることのできない映画です。
もし、その機会に遭遇すればぜひ。