あきりんの映画生活

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「妻への家路」 (2014年)

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2014年 中国 110分
監督:チャン・イーモー
出演:コン・リー、 チェン・ダオミン

切ない夫婦のドラマ。 ★★★☆

チャン・イーモウ監督である。
かっては「紅いコーリャン」や「活きる」でコンビを組んでいたコン・リー主演である。
そしてこの映画、感想をどう書いたらいいのか、判らない。胸が詰まる。

文化大革命時代に、反党的な知識人ということで強制労働送りとなった夫イエンシー(チェン・ダオミン)。
そんな夫をひたすら待ち続ける妻ワンイー(コン・リー)。
そして文化大革命終結し、名誉回復されたイエンシーは20年ぶり家族の元へ戻ってくる。
しかし、ワンイーはイエンシーが夫であることが判らなくなっていた。
あまりに長かった心の疲れからか、夫の顔だけが記憶から失われていたのだ。

顔が判らなくなっていても、それでもワンイーの夫への愛情は変わらない。
そんな記憶障害の妻を、イエンシーは親切な隣人として見守る。
なんとか自分を思い出してもらおうと頑張るイエンシー。

コン・リーは、かっては”中国の山口百恵”と言われていた。
しかし、私はどちらかといえば”中国の小雪”と思っていた。
マイアミ・バイス」でコリン・ファレルの相手役を初めて観たときは、小雪が出ているのか?と思ったほど。

しかし、この映画のコン・リーはどうだ。
この老け役の見事さ。
女性からエロスをすべて抜き取って、ただ情念だけを残した、といった感じ。
特殊メイクは映画の最後数分だけにおこなっているとのことなので、それ以外は化粧と表情、立ち居振る舞いで初老の婦人を演じているわけだ。
すごい。

イエンシーを演じるチェン・ダオミンも好いなあ。
穏やかな風貌で、ひたすら妻につくしている。その情愛の細やかなことといったら。
それなのに、妻からはただの親切な人としか思われていない。愛する夫は自分以外の人だと思われている。

5日に帰るという手紙の一文を忘れずに、毎月5日に駅に迎えに行くワンイー。
目の前に、その出迎えるべき夫がいるというのに、気づけなくなってしまっている姿がなんとも言えない。
その必死な姿につい目頭が熱くなるのは私だけではないだろう。

物語の背景に文化大革命がある。
国家の(私からすれば理解不能な部分が多い)政略の渦に巻き込まれた個人の悲劇。
自分を忘れてしまった妻、そのことにじっと耐えて、ただただ無償の愛を注ぐ夫。

二人の間には娘タンタンがいる。
タンタンの気持ちも良く分かる。
中学生ぐらいのときに学校で教え込まれれば、国家統制的な善悪感を植え付けられてしまうだろう。
国家から反政府的だとされた父親は、当然のことのように敵だったわけだ。
しかし、そのこと故に母から絶対に貴女を許さないとまで言われてしまっているのだ。
タンタンも辛い。

悲劇の主人公は、もちろん妻。しかし、それ以上に悲劇の主人公である夫。
最後の、年老いた二人が駅で佇む場面がなんともやりきれない。
それでも、人間てなんて素晴らしいのだろうとも思われされたのでした。