あきりんの映画生活

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「黒い罠」 (1958年)

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1958年 アメリカ 96分
監督:オーソン・ウェルズ
出演:チャールトン・ヘストン、 オーソン・ウェルズ、 ジャネット・リー、 マレーネ・ディートリッヒ

フィルム・ノワール。 ★★☆

舞台はモノクロで映し出されるメキシコとの国境の街。
乾いた風が吹きぬけているようで、古新聞紙が舞っている。
そこにヘンリー・マンシーニのジャジィな音楽がかぶさる。雰囲気は満点。

物語は、その街で起こった地元有力者の爆破殺人事件をめぐるいざこざ。
新婚旅行で訪れていたメキシコ人麻薬捜査官のヴァルガス(チャールトン・ヘストン)と新妻スーザン(ジャネット・リー)は、その爆破に居合わせてしまう。
アメリカ側の捜査責任者は、跛足で肥満した異形の老刑事クインラン(オーソン・ウェルズ)。
ヴァルガスとクインランはいがみ合いながら捜査に当たっていく。

冒頭の長回しシーンが有名だというこの映画、監督も務めたオーソン・ウェルズのこだわりの画面作りがあふれている。
どす黒い陰謀の雰囲気、暴力が日常のすぐ隣にある緊迫感、そんなものを上手くあらわしている。

そして、そして。
主役はチャールトン・ヘストンなのだろうが、圧倒的な存在感はオーソン・ウェルズの方。
図太い信念で操作も突っ走る。誰にも文句など言わさせねえぞ。
俺様の考えに間違いなぞあるはずがない。そのためには少しぐらいの悪行だってやってのけるぜ。

いやあ、この人物造形は本当にすごい。
オーソン・ウェルズ自身はこの頃はまだあまり太っていなくて、着ぶくれの服とメーキャップで役作りをしたとのこと。
それにしても、アップになったときの表情の凄まじいことといったら・・・。

ヒロインはジャネット・リーなのだが、こちらも圧倒的な存在感を見せつけるのは(脇役の)マレーネ・ディートリッヒ
メキシコのうらぶれた酒場のマダムという役どころ。
出番も少ないのだが、あらわれた途端に強烈に場面を凍りつかせるような迫力があった。

サスペンスとしての物語は、まあ、お世辞にも上級ではない。
しかし、この独特の犯罪映画の雰囲気は一見の価値はあると思える。