あきりんの映画生活

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「転校生」 (1982年)

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1982年 日本 112分
監督:大林宣彦
出演:小林聡美、 尾美としのり

男の子と女の子、入れかわり物語。 ★★★

大林宣彦監督はデビュー作の「ハウス」で好きになった監督だった。
あのわざとらしいチープな画面作り、人を食ったような物語、そしてヒグラシゼミの声が聞こえる夏の夕暮れのようなノスタルジー
その大林監督が尾道を舞台にして撮った”尾道三部作”の第一作目がこの映画。

一男(尾美としのり)の幼なじみの一実(小林聡美)が、転校生として尾道に帰ってきた。
誤ってお寺の石段から転げ落ちた二人は、その衝撃で身体が入れ替わってしまう。
あれ? 俺のアレが無くなっている!と、一実の身体になった一男が叫ぶ。
おれ? 私に変なものが付いている!と、一男の身体になった一実が嘆く。

この映画はなんといっても、当時17歳だった小林聡美の思い切りの好い演技に尽きる。
中身は男の子になってしまったのだから、歩き方をはじめとして細かい仕草も男の子っぽくしなければならない。
それがもう見ていて完璧であった。

胸が露わになる場面も4回ほどある。
それも、海水浴場でパンツだけ履いてブラジャーをしないで更衣室から出てくるとか、男の子ならやりかねない事柄として、である。
17歳の女の子が、映画のためとはいえ、よくぞここまで演じたものだ。
しかし、彼女の男の子を演じたその演技でこの映画は成功している。

それに尾美としのりも立派。
女の子のなよなよとした動作をはじめとして、なによりも表情がまるっきり女の子の表情なのだ。
これにも感心した。

この二人の演技に支えられて、本来はありえない物語が、もしこんなことが起こったらという物語の真実味を出していた。

身体が入れ替わってしまった二人は、それぞれの外見に応じた人物になってそれぞれの家で生活する。
つまり一実の身体になった一男は、一実の家で女の子の生活をする。
一男の身体になった一実は、一男の家で男の生活をする。
当然、それぞれの家族と可笑しなすれ違いが起こったりもするし、学校では一男がとつぜん優等生になったり、一実が喧嘩に強くなったりするわけだ。

さて、身体が入れ替わってしまった二人はどうなる?

映画は始めと終わりだけがモノクロで、途中はカラーである。
このモノクロを使っているところが、特に最後あたりでは情感が溢れてきて、ぐっと来てしまうのに有効となっている。

映画の最後に出てくる台詞は、「さよなら、私」そして「さよなら、俺」。
ユーモアがあふれた物語なのだが、そこは大林監督、ちゃんとノスタルジックにまとめています。
この映画に続く尾道三部作の2作目が、あの「時をかける少女」です。