1958年 アメリカ 128分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジェームズ・スチュワート、 キム・ノバック
ヒッチコックのサスペンスの傑作。 ★★★
あまりにも有名なこの作品。ヒッチコックの正調サスペンスものの代表作。
この映画の魅力は、本格的な推理ものであることに加えて恋愛映画でもあるところだろう。
トラウマから高所恐怖症の探偵スコティ(ジェームズ・スチュアート)は、友人ギャビンから妻マデリン(キム・ノバック)の尾行を依頼される。
ギャビンは妻の行動がおかしく、自殺するのではないかと懸念していたのだ。
たしかにマデリンの行動は奇妙。
絵に描かれた悲劇の女性と自分を同一視しているような、不可解なこともする。
しかし、そんなマデリンを尾行していくうちに、スコティは彼女に惹かれていく。
髪をアップにしたキム・ノバックは、上品な装いで美しいことこの上ない。
この前半でのノバックの上品さが後半になって生きてくる。
ある日、マデリンは本当に高い塔から飛び降り自殺をしてしまった。あれ!
それからというもの、高所恐怖症が徒となってマデリンの飛び降りを阻止できなかったスコティは、後悔の日々を送る。
そんな彼の前に、蓮っ葉な雰囲気なのだが顔かたちはマデリンにそっくりなジュディがあらわれる。
この作品のキモは、マデリンの面影に取りつかれたスコティが、半ば偏執的な人物となって、ジョディにマデリンと同じ髪型、同じ装いをさせるところ。
そして、普通に考えれば気持ち悪いようなスコティのそんな懇願に、ジョディが応えるところ。
スコティよ、それじゃあまりにジョディが可哀想じゃないかい?
ジョディよ、何故あなたはそんなにしてまで他の女性の面影を求めるスコティの懇願を受け入れるのだ?
(以下、ネタバレ)
観ている者には、途中でマデリンとジョディのからくりは明かされる。
さあ、スコティがいつ気付くのか、そして気付いたらどうするのか・・・。
この映画の恋愛部分はかなり捻れた心理となっている。
男はあくまでも創り上げられたマデリンを愛し続けている。いわば虚像を愛している。
一方で虚像を演じた女は、実際の男を愛してしまっている。
それゆえに、女は実際の男の愛に応えようとすれば、自分が虚像になるしかない。
なにか辛い余韻を残す幕切れだった。