あきりんの映画生活

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「クラウド・アトラス」 (2012年)

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2012年 アメリカ 172分
監督:ウォンシャウスキー姉弟/トム・キクウァ
出演:トム・ハンクス、 ハル・ベリー、 ヒュー・グラント、 ベン・ウィンショウ、 ペ・ドゥナ

壮大なオムニバス映画。 ★★★★☆

大変な力作を観てしまった。
3時間近い長尺で、内容も6つの時代の6つの物語が入り組んで展開される。

第1話。1849年、アフリカを航海中に寄生虫の病にかかってしまった弁護士アダム(ジム・スタージェス)の物語。
大金に目のくらんだ医師に毒殺されそうになったりした彼は、航海日誌を書き残す。

第2話。1936年、イギリスのゲイの作曲家、ロバート(ベン・ウィショー)の物語。
彼は老作曲家の手伝いをしながら、名作「クラウド・アトラス6重奏」を作曲する。

第3話。1973年、記者のルイサ(ハル・ベリー)は、企業の不正を糾弾しようとして命を狙われる。
彼女に協力しようとした会社の人間(トム・ハンクス)も飛行機事故に見せかけて殺されてしまう。

第4話。2012年、老いた編集者キャベンディシュ(ジム・ブロートベント)は、殺人事件を起こした作家の本が人気となったために大金を手にする。
しかし、それが徒となって危険な老人ホームに幽閉されてしまう。ここから脱出しなければ・・・。

第5話。2144年、クローン少女のソンミ451(ペ・ドゥナ)は、給仕係として働いていた。
やがて革命のリーダーとなった彼女は、志半ばで拘束・殺される運命になる。
舞台はネオ・ソウルという未来都市で、まるであの「ブレードランナー」の街並みを思わせる魅力的な光景も出てくる。

第6話。2321年、崩壊後の地球で原始的な生活をしているザックリー(トム・ハンクス)。
彼の元へ、遠い星から偵察に来たネロニム(ハル・ベリー)があらわれる。

6つの物語は細かく分断されて、切れ目なしにつながって映し出される。
つまり、6つの物語が平行して映し出されるわけだ。
いきなり時代の異なる物語の場面へと飛ぶわけだ。
それなので、はじめのうちは、これはどの物語の続きだった? この物語はどうなっていたのだっけ? とかなり戸惑う。

しかし、やがて6つの物語の概要が飲み込めてくると、切り替わる物語をそれぞれ楽しむことができるようになる。
それというのも、6つの物語はまったく様相が異なっており、混同しないようになっている。
そしてそのそれぞれが興味をつないでくれるほどに面白い。

これだけの内容のある物語をすっきりと見せるのだから、脚本はすばらしいとしか言いようがない。

それに加えてこの映画の特徴は、一人の俳優が難役も演じていること。
トム・ハンクスハル・ベリーヒュー・グラントも、いろいろな時代の登場人物となってあらわれる。
1人6役ぐらいしているようだ。

ということは、どの物語にもトム・ハンクスが出ているということ。ハル・ベリーも出ているということ。
しかし、気がつかなかったなあ。
エンドクレジットの時にそれぞれの役者が演じた姿が映されるが、えっ、これもトム・ハンクスだったの!というように、驚かされる。
たとえば、第1話の大金に目のくらんだ医者も、第4話の殺人を犯す作家もトム・ハンクスなのである。

ペ・ドゥナなどは特徴ある顔立ちだし、と思っていたら、彼女でも気がつかない役どころを演じていた。
メーキャップってすごいものだ。

映画のテーマは輪廻転生であるようだ。
極端に言ってしまえば、同じ俳優が演じた人物は、その人の生まれ変わりなのかもしれない。
(でも、ハル・ベリーなんて、絶対に判らないメーキャップが幾つもあった。白人まで演じていた)

それぞれの物語自体もゆるくつながっている。
たとえば、1936年のゲイの作曲家は、「アダムの航海日誌」を読んだりしている。
1973年の主人公の出来事を描いた原稿を、2012年の編集者キャベンディッシュが読んでたりする。
2144年に殺されたソンミは、2321年には神様として信仰されてたりする。

長尺でもあるし、内容も濃いので、かなり気合いを入れて観る必要がある。
しかし、それだけの気合いを注入してでも観る価値のある映画でした。