あきりんの映画生活

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「疑惑のチャンピオン」 (2015年)

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2015年 イギリス 103分
監督:スティーブン・フリアース
出演:ベン・フォスター、 ギョーム・カネ

ドーピングの裏を描く。 ★★☆

ランス・アームストロングは実在の人物。
自転車レースの最高峰ツール・ド・フランスで前人未踏の7連覇を達成している。
この映画は、そんな偉業の陰にあったドーピング事件を描いた実録ドラマ。

7連覇をするだけでもすごいのだが、ランス(ベン・フォスター)はなんと、若くして精巣癌になり、脳転移まで起こした状態から奇跡の復活をしている。
当然、彼は癌の手術により男性ホルモンの分泌機能が大きく影響を受けていたと考えられる。
そんな彼が、どうしてあんなに強い? 
誰でも彼の連覇には疑惑を持ったわけだ。

私も含めて大部分の一般の人々は、スポーツマンは清く美しくフェアに競い合っているのだろうと、理想的に思い込んでいる。
当のアスリートたちは、結果を出すためには努力だけでは追いつかないものがあることも充分に知っている。
そこで、彼らの中には練習などの努力に+αを考えてしまうわけだ。

映画は、ランスをはじめとして、彼の所属する自転車チーム全体がドーピングをおこなっていく過程を描いている。
彼らはエリスロポエチンという増血剤を計画的に摂取するドーピングをしていた。
赤血球が増えれば酸素の運搬能力が高まり、筋肉運動や呼吸能力が飛躍的に高まるわけだ。
この摂取スケジュールは「プログラム」と言われていて、映画の原題になっている。

こうして連覇を続ける彼は英雄となり、癌撲滅運動に多額の寄付もおこなったりしている。
こうなると、人気を維持したい自転車競技界が、世間から耳目を集める彼を必要とするようになってしまう。
自転車競技もランスのおかげでメジャーになってきたぞ。なに?ランスにドーピング疑惑? そんなことは言わないでおいて欲しいなあ・・・。

そんな彼のドーピング疑惑を追い続けた一人のジャーナリストがおり、その取材からランスのドーピング違反も認定されたのだ。
引退後にランスは、7連覇を含む全タイトルを剥奪されたのだ。

悪いのは、ランスだけだった?
事実に基づくドラマということで、こんな事が実際におこなわれていたのかと驚く。
最近ではロシアの(国を挙げての)ドーピング事件があった。
本当に悪いのは誰なのだ?

事実がおおきい分だけ、映画としてはただ筋を追う展開になっていた。
ドーピングにそまっていく主人公や、それに巻き込まれていくチーム・メイトのいろいろな思いの表出は弱かった。
ランスは何を考えていた? 彼を優勝させるためのチームメイトたちはどんな風に考えていた?

事実は描かれていたのだが、その事実をおこなった人間そのものは描かれていなかった。
個人的にはそこはちょっと残念だった。
ドキュメント映画として観ればよかったのかな?