2014年 日本 96分
監督:劇団ひとり
出演:大泉洋、 柴咲コウ、 劇団ひとり
タイム・スリップもの。 ★★☆
芸人の劇団ひとりが書いた同名小説を、本人が監督として映画化したもの。
彼は才人だったんだねえ。
人生どん底の売れないマジシャンの晴夫(大泉洋)は、生まれてすぐに自分を棄てた母の顔も知らなかった。
そんな彼のもとへ、長く絶縁状態だった父の訃報が飛び込んでくる。
ホームレスになっていた父のブルーシートの家を訪れた晴夫を突然の雷が直撃する。
意識を取り戻した彼は、なんと40年前の浅草にタイムスリップしていた。
タイムスリップをして若い頃の自分の親に会う、という設定の映画はこれまでにも幾つかあった。
風間杜夫が片岡鶴太郎扮する父親に会う「異人たちの夏」は好い映画だった。
浅田次郎原作のものでは「地下鉄(メトロ)に乗って」があった。あれも好かった。
要するに、基本的にこういう設定の物語は好きなのである。
もちろん「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はその手の代表作だし、少し捻ったところでは「オーロラの彼方に」というのもあった。
この映画でも、春夫は若い日の父(劇団ひとり)に逢い、母・悦子(柴咲コウ)のおなかの中にいる胎児が自分であることを知る。
成り行きで若き日の父とコンビを組んでマジシャンとして浅草の舞台に立つ春夫。
後に仲違いをした父や、生まれたばかりの自分を棄てた母だったが、次第に打ち解けていく春夫。
しかし、悦子の分娩が近づいてみると・・・。
(以下、ネタバレ気味)
最期近く、悦子は、目の前にいる春夫が、実はこれから自分が生む我が子であることを理解する。
こういったところは、ぞくぞくする。
タイムスリップものの醍醐味とも言える。
悦子は、春夫が語った話がこれから起こる出来事であることを知っていた。
自分がその話にはもう登場していないことも・・・。
彼女が分娩室に入るときに、父にいう言葉、「子供のチョコレートを食べちゃ駄目よ」が好かった。
ここだけではなく、この作品では柴咲コウがとにかく好かった。
それなりに物語はちゃんと作られている。
しかし、もう少し深みが欲しかった。
春夫が若い両親に会って抱く感情が、なんとも通り一遍だった。
だから、観ている者に情感が伝わってこなかった。
映画自体としては、もっと切ないものが欲しかったなあ。