1986年 ソ連 134分
監督:ゲオルギー・ダネリア
脱力系不思議SF。 ★★★★☆
噂には聞いていたソ連のカルト映画をやっと観ることができた。
一応はSF映画なのだが、とんでもなく緩~い、脱力系の映画。
なに、これ?(ほめています 笑)
街中で偶然に知り合ったウラジミールとゲデバンは、怪しげな男が持っていた機械に触れた瞬間に、砂漠にまん中に立っていた。えっ?
そこはなんと、地球から遠く離れたキン・ザ・ザ星雲の惑星ブリュクだった。
空気も重力も、地球と一緒で、よかったね(笑)。
そこへトタンやら鉄くずなど廃材を寄せ集めて作ったような空飛ぶ機械がやってくる。
大きなドラム缶の天井に小さなプロペラを取りつけたような機械が、この惑星の空飛ぶ乗り物なのだ。
中からは薄汚い格好の二人の住人が降りてきたぞ。クー!
とにかくすごい創造力である。
がらくたを集めたとしか思えないようなこの惑星の建物が砂漠にポツンと立っている。
そしてこの惑星の住居は、実は地下なのだ。
なんにもないような砂漠に突然蓋が持ち上がって、地下に続く出入り口があることがわかる。
へえ~。
この星の話し言葉は罵倒語の「キュー」と、それ以外の「クー」の二語だけ。
あとはどうもテレパシーを使っているようなのだ。
しかし高い知能の彼らはすぐにロシア語を話せるようになる。なんだ、そりゃ。
この星の住人は、支配者民族のチャトル人と、被支配者であるパッツ人。
この惑星での一番の権力の象徴は、黄色いステテコ!
黄色いステテコをはいている人物に出会ったら、ははあ、と敬わなければならない。
パッツ人は被支配であることを識別するために鼻に鈴のような輪飾りをぶら下げなければならない。なんだ、こりゃ。
チャトル人の前に出たら、パッツ人はへりくだって挨拶しなければならない、クー。
そしてなぜか、この惑星ではマッチ棒が非常に高価なのだ。マッチ棒が、だよ。
金銭の代わりにもなっていて、地球からの二人はことあるごとに、マッチ棒を何本あげるからと約束をしていく。
そりゃ、地球に帰れればマッチ棒なんていくらでも手に入るものね。
折に触れて彼らはお金を稼ぐために歌を歌う。
歌を歌うときはなぜか檻に入らないといけないのだ。だから粗末な檻まで自分たちで用意している。
調子の外れたようなバイオリンに合わせて、”マ~マ、マ~マ”と歌う。
馬鹿馬鹿しいような単調なメロディなのだが、耳に残る。そして力が抜けていく・・・。
どうみたってこの映画は旧ソ連の政治形態を風刺していると思える。
支配者と被支配者といった極端な身分格差。極端な貧富格差もあるようだ。
それに不条理な決まり事の数々。
しかし、表だっての風刺などは当然のことながら検閲に引っかかってしまう。
そこで、それをごまかすためにこんな珍妙な物語が生まれてきたのだろう。
そんなことはさておいても、とにかく緩~い感じでシュールな世界観を楽しむ映画。
これはハマるなあ。
さあ、みんな一緒に、腰を少しががめて両手を低く拡げて挨拶だ、「クー!」(笑)。