あきりんの映画生活

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「横道世之介」 (2012年)

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2012年 日本 160分
監督:沖田修一
出演:高良健吾、 吉高由里、 綾野剛

青春もの。 ★★★

吉田修一は好きな作家で、この映画の原作も大変によかった。
特別な事件も起こらない大学生の日常を淡々と描いているのだが、あれをどのように映像化したのだろう?

大学進学のために長崎から上京してきた横道世之介高良健吾)。
世間ズレしていなくて、お人好し。明るくて素直。
そんな世之介が、真面目な同級生(池松壮亮)や、自分はゲイだと告白する友人(綾野剛)と友情を育む。
また年上の女性に憧れたり、超お嬢様の祥子(吉高由里)と微妙な恋人関係になったりする。

携帯電話もデジタルカメラも、まだない時代の青春像。
少しのんびりしていた雰囲気のあった時代を背景にして、ノスタルジックな気持ちにもさせてくれる。
そしてときおり、その後の登場人物の様子が挟み込まれる。
彼らが懐かしく世之介のことを思い出したりする。

(以下、ネタバレ)

この物語の一番のポイントは、世之介が何でもないことのように亡くなってしまうこと。
それも、ラジオから小さく聞こえてくるニュースとして観ているものには伝えられる。
何でもない日常生活を送っていた者が、何でもなかったことのように不在になってしまう。
それがいいようのない寂しさとして伝わってくる。

ときおり登場人物の何年後かの様子が挟み込まれていた。
その後の祥子がアフリカへ出かけるような(おそらく難民救済ボランティアのようなことで)たくましい女性に成長していたのには、驚かされる。
あの(世間知らずの)お嬢様からの大きな差異にやられた。

そして世之介の遺品として祥子に渡された写真のエピソードが好かった。
先にその写真を見せておいて、最後にその写真を世之介が撮ったときの様子を映し出す。
好い終わり方だった。
(この写真については、文字であらわされたものよりも映像は強かった)

原作小説を映画化する場合は、文字で表された魅力とは別の映像魅力を創り出さなくてはならない。
この”横道世之介”は、小説で充分に魅力的な物語世界となっていた。
で、映画化で新しい魅力が付け加わったかというと、個人的にはそれほどのものはなかった。
いささか残念。