2017年 日本 前編138分・後編140分
監督:大友啓史
出演:神木隆之介、 有村架純、 染谷将太、 倉科カナ
天才将棋棋士の青春もの。 (前)★★★☆ (後)★★★
9歳のときに交通事故で家族を失った桐山零(神木隆之介)は、プロ棋士の幸田(豊川悦治)に引き取られて育つ。
自分には将棋しかない、という悲愴な決意で精進を重ねて中学生でプロ棋士になった零。
今、17歳になった彼は隅田川河畔で独り暮らしをしている。
将棋界では、昨年から実際に中学生棋士だった藤井プロが評判となっている。
私は将棋には疎いのだが、碁を見るのは好きである。
囲碁界では、今年10歳の仲村菫小学生プロが誕生した。
これは今までの11歳でのプロデビューの藤沢里奈プロの最年少記録を抜いている。
(ちなみに私は、今年20歳となった藤沢女流本因坊・女流名人の大ファンである。)
前編は、これまであまり知らなかった将棋の世界が展開されて大変に面白かった。
プロ棋士って、あんな風に将棋会館に出かけていって対局をするんだなあ。
プロは対局で勝ってこそ自分の存在を示すことができる。
強いものだけが残り、弱いものは淘汰されるのが勝負事の世界。
零の育ての父、幸田には2人の子どもがいて、幼い頃からプロ棋士を目指していた。
しかし父は2人に奨励会(プロへなるための修練の場)を止めろという。
今の零に勝てないようでは、この先頑張ってもとうていプロにはなれないぞ。
実の子よりも親友の忘れ形見の方が才能があるとなれば、親としては辛い。
その現実を突きつけられてグレる子どもの心理もよく判る。
その育ての父・幸田も零に敗れて獅子王戦のリーグから陥落していく。
勝負の世界は非情だ
孤児となった零にとっては、生きて行くためには将棋を頑張らなければならなかったのだろう。
俺には将棋しかないんだ!と叫ぶ主人公には、やはり常人には理解不可能な苦悩があるのだろう。
少年時代からの黒縁眼鏡の零を演じて、神木隆之介は好かった。
原作漫画は知らないのだが、おそらく主人公の雰囲気はこの通りなのではないだろうか。
違和感があったのは幸田の娘の香子(有村架純)。
零の宿敵となるA級棋士・後藤(伊藤英明)と不倫を続けながらも、零に微妙な態度を取って見せたりする。
女心はよく判らん。
後編になると、将棋の世界以外の主人公の周りの人間ドラマが絡んできていた。
零が偶然に知り合って心の安らぎを得る川本3姉妹がいた。
本当に好い人たち。
しかしその川本家の次女ひなちゃんのいじめ問題、そして3人を捨てて出奔した川本家の父親問題など。
原作漫画をなぞっているようなのだが、個人的には、なにも将棋映画で扱わなくてもいいのでは、とテンションが下がってしまった。
しかし、前後編合わせて4時間半越えを、退屈することなく1日で見終えた。
原作はまだ書き継がれているよう。
とすると、「ちはやふる」のように続編が作られる?
獅子王戦はどうなった?