あきりんの映画生活

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フェリックスとローラ

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2000年 フランス 89分
監督:パトリス・ルコント
出演:シャルロット・ゲンズブール、 フィリップ・トレトン

ミステリアスな恋物語。 ★★★☆

移動遊園地のオーナーのフェリックス(フィリップ・トレトン)は、ある日、バンパー・カーにくり返し乗っている寂しげな女、ローラ(シャルロット・ゲンズブール)を見かける。彼女は遊園地で働くことになり、フェリックスは次第にローラに惹かれていく。しかし、ローラはうち明けることのないいろいろな謎の部分を抱えていた。

冒頭からサスペンスまがいのシーンがでてきて、あれっと思わせる(この場面は終盤につながっていきます)。
殺される歌手がクラブで歌っているシャンソンも暗い調子で、映画全体の基調をあらわしている。

過去を引きずっているようなローラの言動が、遊園地という、非日常の夢を与える場所でイルミネーションに照らされている。バンパー・カー場でフェリックスとローラが初めて踊る場面もとてもうつくしかった。
そんな光に照らされる部分が明るければ明るいほど、一歩ずれたところの影が濃く出てしまう。

ローラに一途に惹かれていくフェリックスの、打算のない愛し方が痛いほどに描かれる。
ローラを愛するほどに、フェリックスは明るさがなくなったと周囲の皆に言われるのだが、愛は、暗い不安の中に時折りだけかいま見える明るさをたよりに突き進んでいくものなのかもしれない。

浮わついたところのない、沈んでいくような全体のタッチはたしかにルコントのもの。
これまでの作品でも、ルコントはとにかくさまざまな屈折した心理描写を見事におこなってきた。
今回の作品でも、やはり屈折した心を描いているのであり、ゲンズブールは独特の濃いアイ・シャドーのメークで、なにかただならぬものを抑えている雰囲気をよく出していた。

ただ、最後になってあかされる物語の仕掛けが、ちょっと肩すかし。
ローラの、それにいたった心の動きに共感できる人がそれほど多いとは思えないのだが。
だから、ルコント監督の本領が十分に発揮されているとは、ちょっと言い難いのではないか。

もちろん、ハリウッドものとは根本的に違う雰囲気を十分に味わうことはできるのですが。