2007年 アメリカ 105分
監督:アンドリュー・ラウ
出演:リチャード・ギア、 クレア・デインズ
サイコ・サスペンス。 ★★
公共安全局のエロル・バベッジ(リチャード・ギア)は性犯罪登録者の監察を続けてきたが、退職を間近に控え、後任となるアリスン・ラウリー(クレア・デインズ)を指導する。そんな中、若い女性の行方不明事件が起きる。バベッジは自分が監視し続けている登録者の中に犯人がいると確信して、調査を開始する。
アメリカでの性犯罪の頻度は日本とは比べものにならないほど多く、また内容も陰惨であるようだ。
「インファナル・アフェア」で香港から旅だったアンドリュー・ラウ監督のハリウッド初作品は、ノワールではなく、それを扱った社会的に重い題材であった。
性犯罪登録者をチェックするバベッジのやり方は執拗で、ときに常軌を逸した様な側面も見せる。性犯罪を憎みきっているあまり、登録者をも憎んでいるのだ。
たしかに性犯罪の実体は、誘拐、監禁からはじまり、致傷、殺人、さらには死体切断にまで及んでおり、映画の途中ではかなりグロテスクな映像も挿入される。
表面的なストーリーとしては、少女誘拐・監禁をした性的異常者の追跡がすすむ。
しかし、アンドリュー・ラウが描きたかったのは、人間がその本性として持っている悪性と、それを追いつめていく者の中に同じように芽生えはじめる不気味なもの、だったのではないだろうか。
これは「インファナル・アフェア」にも通じる主題である。
冒頭に「深淵を覗き込んだ者は、逆に深淵から覗き込まれている」という警句が提示される。
また、「魔物と闘う者は、自分の内部に魔物を飼い始める」といった内容の警句も出てくる(ニーチェの言葉だそうだ)。
これらが監督の描きたかった主題を表しているのだろう。
ただ、それを意図した分だけ、爽快な娯楽作品というわけにはいかなくなってしまった。
特にクライマックスでは、人間の嫌な部分を無理矢理見せつけられるような展開となり、非常に不快な後味が残ってしまった。
サイコものに弱い人は、ちょっと引いてしまう内容の映画です。