あきりんの映画生活

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「21グラム」 (2003年)

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2003年 アメリカ 124分
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:ショーン・ベン、 ベニチオ・デル・トロ
    ナオミ・ワッツ、 シャリオット・ゲンズブール

人の命をめぐって交叉する3組の夫婦の物語。 ★★★★

タイトルの”21グラム”とは、人間が死んだときに失われる重さとのこと。

心臓移植をおこなうしか生き延びる術がない重い病に罹っているポール(ショーン・ベン)と、彼が死ぬ前に彼の子どもが欲しいと願っている妻(シャルロット・ゲンズブール)。
前科者だが、今は信仰をよりどころにして真面目に働いているジャック(ベニチオ・デル・トロ)。
かっては麻薬に溺れていたこともあるクリスティーナ(ナオミ・ワッツ)は、今は優しい夫と二人の女の子と、穏やかな生活をしている。

冒頭で気怠くベッドにいるポールとクリスティーナが映しだされる。
そして何故か瀕死の状態のポールが映しだされる。
そして何故か胸から血を流しているポールを助けようとして、ジャックに向かって絶叫しているクリスティーナが映しだされる。

時間軸が前後して描かれ、しかも3組の夫婦の話が並行して描かれるので、はじめのうちはやや戸惑う。
しかし最近はときおりみる手法なので、観る側もすぐに描き方が了解できて、物語が断片化されていることを楽しめるようになっている。
この場面は後でどうつながってくるのだろう?とか、これは過去なのだろうか未来なのだろうか?とか。

登場人物はみんなが必死に生きていて、誰も悪い人なんていない。
それでも人生には不幸が待っている。
愛する人を失う人、愛する人を奪ってしまった人(決して望んだわけではないのに)、失われた命のために生き延びることができた人。
それらが絡み合う。深く、重い。

汚れきった風貌のベニチオ・デル・トロが素晴らしい演技で魅せてくれる。
悪事も善行もとにかく思い込んだら必死でやってしまう。そうせずにはいられないような生き方。
生きていく心に余裕がない、そんなところが痛々しく突き刺さってくる。

途中で時折挟み込まれる風景の映像も美しい。鳥が一斉に空へ飛び立つ画面とか、夕暮れの街はずれの遠景などだ。
この映画に必要な雰囲気を伝えるものとして、効果的である。

それに限らず、映像はとてもていねいに撮られた美しさを持っている。
安モーテルのベランダから外を眺めるナオミ・ワッツショーツの赤色も印象的だった。

まるで不幸が待っているのが人生だ、とでもいうような物語。
だから、観ている最中も、見おわったあとも、決して心が明るくなるような作品ではない。
淀んだままで映画は終わっていき、どこに救いがあるのか、とも思ってしまう。
しかし、心に残るぞ。
観て良かったと思えるものが、確かにある作品。

死んだときに軽くなる21グラムは、何の重さなのだろうか?
”魂の重さ”と言ってしまっては、あまりにもそれらしすぎる。
もっと具体的なものをイメージするとすれば、動きを止めた心臓の鼓動の重さか。