1966年 アメリカ 128分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ポール・ニューマン、 ジュリー・アンドリュース
東西冷戦下のサスペンスもの。 ★★☆
ヒッチコック監督の50本目の作品で、世評では凡庸という声が多いとか。
しかし、私は結構面白く観た。
でも、それは単にサスペンス映画として楽しんだ結果であり、ヒッチコックらしいかと言われるといささか疑問になることは否めない。
時代は東西冷戦下。
科学者国際会議に出席するためにヨーロッパを訪れた米宇宙委員会のマイケル(ポール・ニューマン)と婚約者で秘書のセーラ(ジュリー・アンドリュース)。
しかし、マイケルは突然こっそりと東ベルリンへ向かう。
えっ、マイケルはどこへ行くの? 何をしようとするの? 不安に駆られたセーラも彼のあとを追う。
ヒッチコック作品でポール・ニューマンを初めて観た気がする。
ジュリー・アンドリュースの起用もへえ?という感じ。
あの「サウンド・オブ・ミュージック」の翌年の出演だが、え、歌わないの?(苦笑)
実は、ミサイル開発に従事していたマイケルはその情報を持って東ベルリンへ亡命しようとしていたのだ。
東ベルリンの秘密諜報機関に迎え入れられるマイケル。
しかし実は、マイケルは亡命のふりをして東ベルリンの科学者が開発した技術を盗もうとしていたのだ。
計画になかったセーラも付いてきてしまって、上手く行くのかな?
ということで、素人スパイものに、スパイスとして恋人同士のやりとりをからめている。
圧巻だったのは、本当の狙いがバレそうになったマイケルが東ベルリンの諜報員を殺害する場面。
協力者である農家の主婦と一緒にガス中毒死させようとする。
素人ゆえの手際の悪さがハラハラ感を盛り上げていた。
さあ、研究の鍵を握っている頑固老教授から数式を聞き出さなければならない。
でも、脱出するための時間が迫っているぞ。
マイケルは老教授に議論をふっかけるふりをして数式を探ろうとする。
マイケルが黒板に書いた数式を見た教授は、(自尊心をくすぐられて)なんだ、見損なったぞ、正解の数式はこうだ!
やったね。
他にも警察に踏み込まれた劇場からの脱出や、乗客全員の協力でバスで逃亡する場面など、なかなかに展開も目まぐるしく飽きさせない。
後半に登場するポーランドからの亡命貴族のおばさんがものすごく印象的。
リラ・ケドロヴァという女優さんでモスクワ芸術座の出身とのこと。
まあ、すごい一人芝居のような演技で、滑稽でもあり、少し可哀想でもある人物造形は見事だった。
ニューマンとアンドリュースが向かいに座っているのを忘れてしまいそうなほど。
あまりに迫力がありすぎて、逆にちょっと浮いてしまっていたぐらい。もったいない使い方だった。
無事にマイケルとセーラは脱出できるのだが、ちょっと気になったのは、東ベルリンに残された人たち。
あの農園で協力してくれた農夫や主婦はあの後どうなったのだろう?
バスの協力者たちは逃げられたようだが、あの農園の人たちは見捨てられたまま?
それに協力してくれた女性医師もいた。彼女はあの後大丈夫だった?
なんだか、アメリカと主人公達さえよければ後は知らん、という感じがしてしまった。
少しもやもやする後味でした。