1963年 イギリス 118分
監督:アンソニー・アスクィス
出演:エリザベス・テイラー、 リチャード・バートン、 ルイ・ジュールダン
オーソン・ウェルズ、 エルザ・マルティネリ、 マーガレット・ラザフォード
空港を舞台にした群像劇。 ★★★
ロンドン、ヒースロー空港からアメリカに向かうはずの飛行機が、濃霧のために飛び立つことができず、乗客たちは空港で一夜を過ごすことになる。この予期しなかった事態が人々の人生に大きな転機をもたらす。
原題は「VIPルームの人たち」とでも言うようなことだが、邦題は物語性を上手くあらわしていて巧みである。
若い恋人(ルイ・ジュールダン)と駆け落ちをしようとしている富豪夫人(エリザベス・テイラー)は、夫(リチャード・バートン)に置き手紙をしてきた。
しかし、定刻に飛行機が出発しなかったために、旅立つ前にその手紙を夫に読まれてしまう。さあ、どうなる?
エリザベス・テイラーはさすがに濃い。
美人度が派手すぎて、登場するだけで周囲をすべて喰ってしまう。こんな人が空港を歩いていたら、行き会った人全員が立ち止まるんじゃないかな(笑)。
マリリン・モンローでも思うのだが、こんなに濃いいと、ある意味で役柄が限定されてしまって、彼女自身は大変だったのではないだろうか。
会社が吸収合併されそうになっている実業家と、秘かに彼を慕っている秘書の話が、それにからむ。
この色気の全くない地味な秘書(E・テイラーの正反対の人物像である)がけなげであった。
飛行機が遅れたために偶然居合わせた人との間に起こるドラマとは?
オーソン・ウエルズは怪物ぶりを発揮している。脱税を画策する映画プロデゥーサーという役どころ。
飛行機が遅れたために女優(エルザ・マルティネリ)との打算的な関係が急転するという、ちょっとコミカルな部分を担当している。
さらに、無垢な没落貴族の老未亡人(マーガレット・ラザフォード)がそれにからんでくるのだが、彼女はなにかほのぼのとさせる役回り。
飛行機が遅れたことによって、2組ずつの人生の転機が絡み合う。
細かいことを言えば、エリザベス・テーラーは表情の変化に乏しい。ほとんど演技をしていなくて、ただそこにいるだけではないか、と言われてしまいそう。
それでも先刻も言ったように、彼女は周りを圧倒している。すごいものだ。
妻に無関心だった夫にしても、妻が自分から離れようとして初めて妻を愛していたことに気づく、ということなのだが、どうも説得力に欠ける。
そんなに急変するかよ、と言いたくもなる。
しかし、全体的にはよくできた映画だと思う。
映画の大部分は空港のVIPルームと、待機するためのホテルの部屋が舞台となっている。
絵としては単調になりがちで、大筋は予想された方向へ王道を進むのだが、極上ワインをゆっくりと味わうような雰囲気で観ることができた。
舞台劇をみるようなつもりで。