1979年 アメリカ 130分
監督:ハル・アシュビー
出演;ピーター・セラーズ、 シャーリー・マクレーン
無垢な人間の寓話。 ★★
簡単にあらすじを言ってしまうと・・・。
長年住み込みで庭師として働いていた男(ピーター・セラーズ)が、当主の死によって屋敷を追い出されて、あてもなく街をうろうろしてたところ、ある事故がきっかけで政界の大物と知り合い、いつのまにか大統領候補に祭り上げられるまでになる・・・というもの。
この映画のミソは、主人公の庭師のチャンスが全くの世間知らずの無垢の人物であるところ。
文字も書けないチャンスの頭にあるのは、ただTVを観たいということだけ。
どうやったら食事を確保できるのかもよく判っていない。
そんなチャンスだが、単に世間から隔離された生活をしていたために一般の事柄に対する反応がズレているのかもしれないし、あるいは元々なんらかの知的障害があってズレているのかもしれない。
私の受けた感じでは知的障害のある主人公という設定だろうと考えた。
しかし、その無垢による反応のズレを、周囲の人は深謀遠慮による反応だと思い込む。
政財界の大物たちが、チャンスに話しかけ、彼の受け答えに感心する。
チャンスはただTVを観たいと言っているだけなのに・・・。
世間の人々は無垢などというものがあることを知らないのだ。
痛烈な皮肉、社会風刺となっている。
大物人物の妻にシャーリー・マクレーン。
上品な美しさなのだが、彼女はどこか憎めない幼さのような無邪気さがある。
彼女のチャンスに対するとんちんかんな反応も愉しい。
この物語は大きな寓話になっていて、ある解説によれば、ニーチェの「ツァラストゥラはかく語りき」をモチーフにしているとのこと。
そんなことを言われても読んだことがないので判らないよ(泣)
でもそういえば、たしかに映画のはじめの方でデオダート(懐かしい!)の「ツァラストゥラはかく語りき」が流れていた。
馬鹿馬鹿しい映画ではありません。ひとひねりしたコメディ映画です。
チャンスを見いだした大物が亡くなり、政財界の有力者たちはチャンスを次期大統領に担ぎ出そうと画策している。
しかし、そんなことには無関心なチャンスは池の水の上を歩いて去っていく。
ここはキリストのおこなった奇跡をあらわしているとか。
う~ん。