あきりんの映画生活

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「私の少女」 (2014年)

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2014年 韓国 119分
監督:チョン・ジュリ
出演:ペ・ドゥナ、 キム・セロン

震える心。 ★★★

こちらも韓国映画だが、グロは一切なし。
しかし、登場人物たちの心が抱える淀んだどろどろとしたものを、これでもかと差し出してくる。
やはり、重い。

舞台は、若者がいなくなってしまうような田舎港町。
そこの警察署へ、エリートだったらしい女性警視ヨンナム(ペ・ドゥナ)が署長として着任する。
こんな片田舎の小さな署へ、なぜエリート警視が赴任した?

村を自転車で巡回していたヨンナムは、苛めに遭っている少女ドヒ(キム・セロン)と出会う。
ドヒは、母親が蒸発しており、義理の父親ヨンハと祖母にも虐待されていたのだ。
ヨンナムはドヒをなんとか虐待から守ってやろうとし、ドヒも辛い境遇から逃れようと、ヨンナムにすがりついてくる。

ドヒ役のキム・セロンは「アジョシ」で観た子役。
深い闇を心に抱えているような無表情さなのだが、ときおり見せる笑顔が可愛い。
しかし同時に、心の底では何を考えているのか判りきれないような不気味さを感じさせる雰囲気が、巧みに醸し出されていた。

村は過疎高齢化に直面しており、ドヒの義父ヨンハが唯一の若者。
そのヨンハは、外国人を不法就労させているのだが、村は彼等がいなくては漁業を続けることもできない。
ヤンハが幼児虐待をしていようが、外国人を不法就労させていようが、村人たちはヨンハを必要として頼り切っている。それがこの村の現状だったのだ。

ヨンナムはドヒを虐待から助けるために、夏休みの間、自分の宿舎に引き取ることにする。
初めて安らいだ日々を迎えたようなドヒの笑顔。
しかし、そんな二人の日々は、何か不穏なものを孕んでいるような印象を与えるのだ。
このまま上手く収まるはずがない、と思わせる不吉な予感を伝えてくるのだ。

実は、ヨンナムにはこの村へ左遷させられた秘密があったのだ。

虐待で肉体と共に傷ついていた心と、社会から苛められて疲れ果てていた心(焼酎をがぶ飲みしないと眠れないほどに)。
その二人の心がお互いを癒やす映画だった。

(以下、ネタバレ気味)

日本でいえば、あれだけの保護者による虐待児童を見つけたら、児童相談所に届け出て、しかるべき行政による方法をとるだろう。
韓国ではそういった手段はないのだろうか。

(ツッコミ)
ヨンナムが抱えていた秘密を考慮すれば、ドヒを自宅に引き取れば、周囲からある種の疑いを掛けられる可能性は容易に判ったはず。
ちょっと安易だったなあ(苦笑)。

それはさておき。

この映画、ペ・ドゥナの透明感のある演技も良かったが、なんといってもキム・セロンだったろう。
彼女を観る映画だったなあ。